「溶連菌感染症」
ってどんな感染症?
「溶連菌感染症」ってどんな感染症?
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- 発疹
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- せき
- 倦怠感
溶連菌感染症とは、主にA群溶血性レンサ球菌(溶連菌)という細菌によって起こる感染症です。溶連菌は、健康な人の鼻やのどなどによくいる菌ですが、呼吸器や皮膚から感染するとさまざまな疾患をひき起こします。「冬」、「春から夏にかけて」と、年間で2回流行のピークがあります。
- ■流行の特徴と主な症状
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溶連菌感染症の一般的な疾患は、学童期によく見られる急性の咽頭炎「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」、乳幼児に多く見られる皮膚感染症「伝染性膿痂疹(とびひ)」が挙げられます。
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
- 2〜5日の潜伏期期間の後、突然の発熱と喉の痛みなどの風邪のような症状から始まります。その後、舌にイチゴのようなブツブツができたり(イチゴ舌)、紅い発しんが全身に出ることもあります。
- 伝染性膿痂疹(とびひ)
- 水疱(水ぶくれ)がみられたり、黄かっ色の膿のかさぶたが出きたりします。 かゆみがあり、かいて破れると、火事の飛び火のように周囲に移っていくので「とびひ」とも呼ばれます。虫刺されなどをひっかいたり、転んだりしてできた傷口について感染します。幼児・小児で鼻をさわるくせがあると、鼻の周囲から感染が始まることもあります。
- 「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」
- 溶連菌が血液、筋肉などに入ると、菌が出す毒素により、初期には手足の激しい痛み、腫れなどから非常に急激・劇的に進行し、重症な場合は、手足の壊死、ショック症状を引き起こし、死にいたることも。このため、溶連菌は「人食いバクテリア」とも呼ばれています。
感染経路
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くしゃみやせきによって、細菌を含んだしぶきが飛び散り、それを吸い込いこむことで感染します。感染原因のほとんどは飛沫感染です。
- 感染した人の皮膚が、他の人の傷口に接触して感染します。
- 食品を介して経口感染する場合もあります。
※感染力は急性期に最も強く、その後徐々に弱くなっていきます。
溶連菌感染症の予防・対策のポイント
感染しない/拡げないために
基本は手洗い
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
- 伝染性膿痂疹(とびひ)
普段からしっかり手を洗う習慣をつけておくことが大切です。流水と石けんで十分に手を洗い、タオルの共用はひかえましょう。また、アルコール手指消毒薬も効果があります。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
せきエチケット
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
せきやくしゃみが出るときは、マスクをつけましょう。マスクをしていないときに出そうになったら、ティッシュや腕で、口と鼻をおおってください。もしも手のひらで口や鼻をおおってしまったら、すぐに手洗いを。
⇒「マスクの使用方法」について詳細はこちら
皮膚の清潔とスキンケア
- 伝染性膿痂疹(とびひ)
手洗いや入浴により皮膚を清潔にし、スキンケアを心がけましょう。また、虫刺されなどでかき傷を作らないようにし、
鼻をいじった手で傷をさわらないように注意しましょう。
感染者のケアをする場合
自宅や施設で感染者のケアをする時は、感染を広げないように注意しましょう。標準予防策※に加え、飛沫感染・接触感染のための対策が必要です。
※標準予防策:感染の有無に関わらず、感染源となりうるものに対して感染の可能性があると想定して対応する方法。
手洗いは感染予防の基本
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
- 伝染性膿痂疹(とびひ)
流水と石けんで十分に手を洗い、タオルの共用はひかえます。また、アルコール手指消毒薬も効果があります。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
ケア時はマスク・ビニルエプロン(ガウン)・手袋の着用
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
- 伝染性膿痂疹(とびひ)
ケアをする時は、飛沫やしぶきを吸い込んだり、衣服が汚れないようにするために
マスク・エプロン・手袋を着用し、細菌・ウイルスに直接触れないようにしましょう。
次のものは感染源となる可能性があります。
① 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
② 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
③ 使用した器具・器材(注射針・ガーゼ等)
これらに触れる可能性がある時は、必ず手袋を着用しましょう。同じ人のケアでも、排泄物や創傷皮膚に触れた後は手袋を交換してください。
手袋やエプロンを脱いだ後は、手指消毒が必要です。
⇒マスク・エプロン・手袋、着脱のタイミングと使用方法のチェックシートはこちら
学校・幼稚園・保育園等では?
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
- 伝染性膿痂疹(とびひ)
学校、保育施設や幼稚園などでは、集団感染が起こりやすくなります。患部をガーゼ等で保護し、周りにつけないようにすることで登校(通園)可能ですが、タオルや寝具の共用は避けましょう。プールの水では感染しませんが、治るまではやめましょう。
感染した場合の登校(通園)の目安として、適切なお薬(抗菌薬)を飲み始めてから24時間経過すれば感染力は失せるため、それ以降は可能とされています(*1)。
⇒その他注意すべき感染症はこちら
(*1) 文部科学省「学校において予防すべき感染症の解説」2018年3月発行 p.52
溶血性連鎖球菌に効果的な消毒
感染者が目や顔を触った手で触れたものや環境は、対象物にあわせて、
アルコール、次亜塩素酸ナトリウム、熱水による消毒を行いましょう。
次亜塩素酸ナトリウムの濃度につきましては、塩素濃度約200〜1000ppm(0.02%から0.1%)が有効とされています。
なお、次亜塩素酸ナトリウムは、酸性の洗浄・漂⽩剤、シアヌール酸系の製品と混合すると塩素ガスが発⽣して危険ですので、注意してご使⽤ください。
⇒「次亜塩素酸ナトリウム製剤の特徴と注意点」について詳細はこちら
FAQ
とびひの原因菌は常に体にいるというのは本当ですか?どのように感染しますか?
黄色ブドウ球菌は鼻腔に常在しており、皮膚についている状態では感染はしません。鼻に触れた手で、傷口を触ることで菌が体内に入り、感染します。アトピー性皮膚炎で皮膚のバリアが弱くなっている場合も、とびひにかかりやすいため注意が必要です。
とびひの予防・対策のポイントはこちら
溶連菌感染症は大人にもうつりますか?
「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」は学童期の子ども、「伝染性膿痂疹(とびひ)」は乳幼児の感染が多いですが、抵抗力の低下した大人にも感染します。合併症を引き起こすこともあるため、気になる症状が出た場合は、医療機関を受診しましょう。
また、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は子どもから大人まで発症しますが、特に30歳以上の大人に多くみられます。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の症状はこちら
「急性期」とはどういう意味ですか?
溶連菌感染症の感染力は、「急性期」に最も強く、その後徐々に弱くなっていきます。
「急性期」とは、「症状が急に現れる時期」です。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の場合、風邪のような症状から始まるため、気がつかず家庭内感染を起こす可能性があります。
手洗い、せきエチケットなど、日常の感染対策を正しく行いましょう。
溶連菌感染症の予防・対策のポイントはこちら
関連情報(下記サイトを参考・編集し作成)
- 東京都こども医療ガイド とびひ-解説-
- http://www.guide.metro.tokyo.jp/sick/tobihi/index.html
- 東京都こども医療ガイド 溶連菌(ようれんきん)-解説
- http://www.guide.metro.tokyo.jp/sick/youren/index.html
- 国立感染症研究所 IDWR 2012年第20号<注目すべき感染症>A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/group-a-streptococcus-m/group-a-streptococcus-idwrc.html
- こども家庭庁 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)
- https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/c60bb9fc/20230720_policies_hoiku_25.pdf
- 文部科学省 学校において予防すべき感染症の解説 2018年3月発行
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/encycropedia/392-encyclopedia/317-rs-intro.html
- 国立感染症研究所 劇症型溶結性レンサ球菌感染症とは
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/341-stss.html
作成日:2023年12月