「劇症型溶血性
レンサ球菌感染症
(STSS) 」
ってどんな感染症?
- 症状 ▶︎症状 ▼
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- 発熱
- 悪寒
- 皮膚の化膿・炎症
- 腕や足の腫れ
- 菌血症
- 敗血症
- 呼吸状態の悪化
- 頭痛
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)とは、溶血性レンサ球菌(溶連菌)という細菌によってまれに引き起こされる重篤な感染症です。原因となる主な菌種としては、A群、B群、C群、G群レンサ球菌が知られています。
毎年冬と、春から初夏にかけて流行する「A群溶血性レンサ球菌」は、一般的に子どもに「のどの風邪」を引き起こす細菌で重症化は稀です。対して、この劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、突発的に発症して病状が劇的に進行し、最悪の場合は発病後数十時間以内にショック症状から死に至ることも。その致死率は約30〜40%とされていますが、重症化するメカニズムはまだ解明されていません。
また、子どもから大人まで幅広い年齢層に発症しますが、特に30歳以上の大人に多いのが特徴です。
治療はペニシリン系抗菌薬と呼ばれる抗菌薬が第一選択肢ですが、急激に症状が進行した場合、緊急手術によって壊死した部分などを除去したり、集中治療などの全身管理を行うことがあります。
- ■流行の特徴と主な症状
- 近年は、A群溶血性レンサ球菌によって引き起こされる劇症型溶血性レンサ球菌感染症の報告が増えています。2024年の届出報告数は6月時点で1060人と、この時点ですでに2023年の報告数(941人)を超えました。
1999年に統計を取りはじめて以降最多となっており、さらに増加傾向にあります。
主な症状として、最初は腕や足の傷が痛くなったり腫れたりし、さらに発熱・血圧低下などが起こります。その後、手足の壊死、昏睡や呼吸状態の悪化、肝不全・腎不全といった多臓器不全を起こし、場合によっては数時間で急速に全身状態が悪くなります。
どのように感染するの?
- ■主な感染経路
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突然発病することもありますが、多いのは、傷口などから血液や筋肉に菌が入り込むことによって引き起こされるケースです。
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くしゃみやせきによって、細菌を含んだしぶきが飛び散り、それを吸い込いこむことで家庭内や集団内に広がります。
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何らかの理由で溶連菌が傷口から侵入して感染します。血液や筋肉に入ると、溶連菌が出す毒素により症状が急激・劇的に進行し重篤な疾患となることがあります。
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症の
予防・対策のポイント
感染しない/拡げないために
基本は手洗い・手指消毒
普段からしっかり手を洗う習慣をつけておくことが大切です。
流水と石けんで十分に手を洗い、タオルの共用はひかえましょう。
また、アルコール手指消毒薬も効果があります。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
せきエチケット
せきやくしゃみが出るときは、マスクをつけましょう。
マスクをしていないときに出そうになったら、ティッシュや腕で、
口と鼻をおおってください。
もしも手のひらで口や鼻をおおってしまったら、すぐに手を洗いましょう。
⇒「マスクの使用方法」について詳細はこちら
傷口の清潔な処置
小さな傷口から溶連菌が侵入し、感染するケースがあります。傷口を処置する際には手を洗ったり、アルコールベースの消毒剤を使用したりすること。傷ができたら傷口をしっかり洗って汚れを落とす、傷口を汚れた手で触らないなど、傷口を清潔に保ちます。また、傷をむやみに触らないなどを心がけます。
そもそも、感染症は劇症型溶血性レンサ球菌感染症だけではありません。手指衛生や咳エチケット、傷口を清潔にすることなどによって多くの感染症の予防ができますので、日々、基本的な対策は行っておきましょう。
傷口の状態が悪化したり体調が悪くなったりしたとき
急に傷口の状態が悪くなって高熱が出たり、うわごとを言ったり応答があやふやだったりするような意識障害があれば、迷わず救急車を呼びましょう。
感染者のケアをする場合
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)は、急激に重篤になる病気なため家庭や施設でケアすることはまれですが、
通常の溶連菌感染症には以下のようなケアがあります。
自宅や施設で感染者のケアをする時は、感染を広げないように注意しましょう。
標準予防策※に加え、飛沫感染・接触感染のための対策が必要です。
※標準予防策:感染の有無に関わらず、感染源となりうるものに対して感染の可能性があると想定して対応する方法。
手洗いは感染予防の基本
流水と石けんで十分に手を洗い、タオルの共用はひかえます。また、アルコール手指消毒薬も効果があります。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
ケア時はマスク・エプロン(ガウン)・手袋の着用
ケアをする時は、飛沫やしぶきを吸い込んだり、衣服が汚れないようにするために
マスク・エプロン・手袋を着用し、細菌・ウイルスに直接触れないようにしましょう。
次のものは感染源となる可能性があります。
① 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
② 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
③ 使用した器具・器材(注射針・ガーゼ等)
④ 上記に触れた手指
素手で触らず、必ず手袋を着用しましょう。同じ人のケアでも、排泄物や創傷皮膚に触れた後は手袋を交換してください。
手袋やエプロンを脱いだ後は、手指消毒が必要です。
⇒マスク・エプロン・手袋、着脱のタイミングと使用方法のチェックシートはこちら
溶血性レンサ球菌に効果的な消毒
感染者が目や顔を触った手で触れたものや環境は、対象物にあわせて、
アルコール、次亜塩素酸ナトリウム、熱水による消毒を行いましょう。
次亜塩素酸ナトリウムの濃度につきましては、塩素濃度約200〜1000ppm(0.02~0.1%)が有効とされています。
なお、次亜塩素酸ナトリウムは、酸性の洗浄・漂⽩剤、シアヌール酸系の製品と混合すると塩素ガスが発⽣して危険ですので、注意してご使⽤ください。
⇒「次亜塩素酸ナトリウム製剤の特徴と注意点」について詳細はこちら
FAQ
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は大人も感染しますか?
感染します。乳幼児の感染が多いですが、特に、免疫力が低下している高齢者や持病のある人がリスクが高く、
進行する可能性があります。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の予防・対策のポイントはこちら
A群溶血性レンサ球菌との違いはなんでしょうか?
A群溶血性レンサ球菌は、主に軽度の感染症を引き起こす細菌であり、咽頭炎や蜂窩織炎(蜂巣炎)などが一般的です。しかし、この細菌が重篤化した場合、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)を引き起こすことがあります。2023年の夏以降、A群溶血性レンサ球菌による急性咽頭炎の患者数が増加しているため注意が必要です。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は海外でも増えていますか?
世界的にCOVID-19の対策が緩和された2022年以降、多くの地域で増加が確認されており、昨シーズン流行した地域もあれば今シーズン流行している地域もあります。このような増加傾向については日本に限定されるものではありません。
関連情報(下記サイトを参考・編集し作成)
- 国立感染症研究所 劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/341-stss.html
- 厚生労働省 劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137555_00003.html
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-06.html - 国立感染症研究所 国内における劇症型溶血性レンサ球菌感染症の増加について(2024年6月時点)
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/tsls-m/2655-cepr/12718-stss-2024-06.html
作成日:2024年9月