「ロタウイルス」
ってどんな感染症?
「ロタウイルス」ってどんな感染症?
主な症状
- 症状 ▶︎症状 ▼
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- 嘔吐
- 下痢・腹痛
- 発熱
ロタウイルスとは、冬から春にかけて乳幼児に急性の胃腸炎を引き起こす原因ウイルスです。感染力がきわめて強く、ごくわずかなウイルスが体内に入るだけでも感染します。5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はロタウイルスが原因です。
ロタはラテン語で「車輪」という意味です。ロタウイルスを電子顕微鏡で見ると車輪のような形をしています。

- ■流行の特徴と主な症状
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例年冬から春にかけて流行します。ロタウイルス感染症は乳幼児期(0歳~6歳ころ)にかかりやすい病気で、5歳までにほとんどの小児が感染すると言われています。保育園、幼稚園、小学校などで集団感染することも珍しくありません。ロタウイルスは、感染力が非常に強く、手洗いや消毒をしっかり行っても感染予防をすることが難しいため、予防接種を受けることが推奨されています。
一方、大人はロタウイルスの感染を何度も経験しているため、ほとんどの場合、症状は出ません。ただし体力が落ちている大人は要注意。病院や老人保健施設、福祉施設などでは集団発生することがあります。
感染すると、2~4日の潜伏期間を経て、水のような下痢、吐き気、嘔吐、発熱、腹痛などの症状が現れます。特に乳幼児では初めて感染したときに症状が強く出ます。
現在、ロタウイルスに効く抗ウイルス薬はありません。治療は原則、症状を楽にするための対症療法です。脱水を防ぐために水分を補給し、体力が落ちないように栄養を補給しましょう。脱水症状がひどくなると入院治療が必要になる場合も。もしも意識の低下やけいれんが見られた場合は、死に至る可能性もあるため、速やかに近くの医療機関を受診してください。
どのように感染するの?
- ■主な感染経路
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- ロタウイルスは感染者の便に大量に含まれており、主な感染経路はその便に触れた手指などから口へと感染する糞口感染です。便との接触だけではなく、感染者が触れたものに間接的に触れることでも感染する可能性があります。
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汚染された水や食品を介して、ロタウイルスが口に入って感染することがあります。
ロタウイルスの予防・対策のポイント
感染しない/拡げないために
嘔吐物や便の処理
嘔吐物や便を掃除するときは、使い捨てのマスクと手袋を着用し、汚物中のウイルスが飛び散らないように、静かに拭き取ります。床に付着した便や吐物は、静かに拭き取った後、次亜塩素酸ナトリウムで消毒してください。
⇒嘔吐物の処理方法動画はこちら
オムツ交換の方法
オムツ交換をするときは、使い捨てのゴム手袋などを使い、できるだけ直接手で触れない工夫を。捨てる場合はポリ袋などに入れ、周りを汚染しないように注意しましょう。ゴム手袋を外した後の手洗いも忘れずに!

寝具や衣類の洗濯
嘔吐物や便が付着したシーツなどは、しぶきが飛び散らないように、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします。本来なら熱水による洗濯(85℃で1分間以上)が適していますが、熱水が使えない洗濯機であれば、水洗いした後、次亜塩素酸ナトリウムで消毒を。また、高温の乾燥機を使えば殺菌効果が期待できます。
布団などすぐに洗濯できないものは、よく乾燥させてスチームアイロンや布団乾燥機を使うと効果的です。下洗いした場所は、次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、洗剤を使って掃除してください。
次亜塩素酸ナトリウムは漂白作用があるので、色物・柄物を 消毒する際にはご注意ください。
ワクチン接種
ロタウイルスワクチンは「定期接種」の対象となります。ワクチンを接種することにより、ロタウイルス胃腸炎による入院患者を約70~90%減らすことができたと報告されています。ワクチンは2種類あり、どちらも同様の効果があります。初回接種は生後6週から14週6日までに受けてください。その後は決められた期限と回数を守って接種しましょう。
1価ワクチン(2回接種):接種は生後24週まで
5価ワクチン(3回接種):接種は生後32週まで「腸重積症」に気をつけて腸重積症は、腸の一部が隣接する腸管にはまり込む病気で、ワクチンの接種にかかわらず、3か月〜2歳くらいまでの乳幼児がかかりやすい病気です。ワクチン接種後(特に初回接種後)1週間以内に、腸重積症の症状(突然激しく泣く、血便が出る、嘔吐する、ぐったりして顔色が悪い、機嫌が良かったり不機嫌になったりを繰り返す)といった様子が1つでも見られるときは、医療機関を受診しましょう。ワクチン接種から1週間程度は、乳幼児の便中にワクチンウイルスが排泄されます。二次感染予防のため、接種した乳幼児の排せつ物を取り扱う方は、手洗いをしっかり行ってください。⇒「予防接種」について詳細はこちら

学校・幼稚園・保育園等では?
下痢、嘔吐などの症状が軽くなり、全身状態がよければ登校(園)可。症状が治まっても手洗いの励行を。
⇒その他注意すべき感染症はこちら
感染者のケアをする場合
自宅や施設で感染者のケアをする時は、感染を広げないために標準予防策※が必要です。
※標準予防策:感染の有無に関わらず、感染源となりうるものに対して感染の可能性があると想定して対応する方法。
ケア時はマスク・エプロン(ガウン)・手袋の着用
血液・体液に汚染される可能性がある場合は、ガウンまたはエプロン、手袋、必要に応じてマスク、ゴーグルなどの個人防護具を着用します。次のものは感染源となる可能性があります。① 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
② 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
③ 使用した器具・器材(注射針・ガーゼ等)
これらに触れる可能性がある時は、必ず手袋を着用して取り扱いましょう。同じ人のケアでも、排泄物や創傷皮膚に触れた後は手袋を交換してください。
手袋やエプロンを脱いだ後は、手指消毒が必要です。⇒マスク・エプロン・手袋、着脱のタイミングと使用方法のチェックシートはこちら
室内物品の消毒と注意点
ドアノブやスイッチなど、よく触れる場所は、消毒用エタノールによる二度拭きか、次亜塩素酸ナトリウムで消毒を。感染者が使った食器類も、次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。トイレ・風呂が汚れた場合はすぐに掃除をして清潔に保ちましょう。血液や体液がついた器具・物品は、むき出しにならないようにしっかり包んで捨てるか、汚染を洗浄・除去してから消毒を行います。
目に見える汚れがある場合は、手袋・ガウン・ゴーグルを着用し、流水でよく洗い流してください。消毒が必要な場合は浸漬消毒を行った後に水洗いし薬剤を除去してから、清潔な環境で乾燥させます。水に濡らすことができないものは薬液を含ませた布や不織布などで清拭消毒を行ってください。
また物品使用上の注意点として、歯ブラシやカミソリは血液・体液が付着するため、共有は避ける必要があります。
⇒身の回りの清掃・消毒についてはこちら
環境管理:通常の清掃を行い、血液や体液による汚染がある箇所は、手袋を着用し、ペーパータオルなどで汚れを除去したのち、次亜塩素酸ナトリウムにて清拭消毒します。
リネン類:ランドリーバッグなどに入れて運搬し、血液や体液に汚染されている場合は感染性リネン類として取り扱い、バッグから血液が漏れないよう注意します。洗濯は通常の熱水洗浄(80℃10分)の熱水洗濯機で洗濯、消毒薬を使用する場合は、次亜塩素酸ナトリウムに数分間浸漬します。血液や体液の汚染がひどい場合は廃棄します。
ロタウイルスに効果的な消毒
ロタウィルスは「ノンエンベロープウイルス」のため、次亜塩素酸ナトリウムが有効です。
消毒薬使用時には、適用する素材や効果得を確認しましょう。
衣類が便や吐物で汚れたときは、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)でつけおき消毒をした後、他の衣類と分けて洗濯しましょう。
次亜塩素酸ナトリウムの濃度につきましては、塩素濃度約200〜1000ppm(0.02~0.1%)が有効とされています。
なお、次亜塩素酸ナトリウムは、酸性の洗浄・漂⽩剤、シアヌール酸系の製品と混合すると塩素ガスが発⽣して危険ですので、注意してご使⽤ください。
⇒「次亜塩素酸ナトリウム製剤の特徴と注意点」について詳細はこちら
FAQ
ロタウイルスワクチンは任意接種ですか?定期接種ですか?
ロタウイルスワクチンは、2020年10月1日から定期接種(全額公費)の対象です。自治体からの案内では他のワク
チンと合わせて案内を行うため、初回接種の標準的接種期間を生後2か月から出生14週6日後までとしていますが、
出生6週0日後以降であれば、生後2ヵ月よりも前に受けても医学的には問題ありません。ただし初回接種を出生15週0日後以降に受けることは、安全性の観点から勧められません。ワクチンは定められた接種期間・回数を守りましょう。
ロタウイルスはどうやって感染しますか?
主な感染経路は接触感染や経口感染です。ロタウイルスは、ロタウイルスによる胃腸炎の患者の便に大量に含まれており、ウイルスがついた手や汚染された食品などから感染が広がっていきます。便を介して口からウイルスが侵入するため「糞口感染」とも言われます。
ロタウイルス感染症に治療法はありますか?
現在、ロタウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。このため脱水を防ぐための水分補給や体力を消耗したりしないように栄養を補給することなどの対症療法が治療の中心になります。下痢止め薬(止しゃ薬)は、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないことが望ましいでしょう。
関連情報(下記サイトを参考・編集し作成)
- 厚生労働省 感染性胃腸炎(特にロタウイルス)について
- https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/Rotavirus/top.html
- 厚生労働省 ロタウイルスワクチン
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/rota/index.html
- 厚生労働省 ロタウイルスに関するQ&A
- https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/Rotavirus/index.html
- 国立感染症研究所「ロタウイルス感染性胃腸炎とは」
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ra/rotavirus.html
作成日:2024年12月