「ノロウイルス」
ってどんな感染症?
「ノロウイルス」ってどんな感染症?
- 症状 ▶︎症状 ▼
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- 嘔吐
- 下痢・腹痛
- 発熱
ノロウイルスとは、ウイルス性胃腸炎の原因として知られる、感染力の強いウイルスのことです。ノロウイルスによって引き起こされる感染症を、ノロウイルス感染症と言います。食品だけでなく、感染者の嘔吐物や便にも大量に含まれているため、二次感染を起こしやすいのも特徴です。わずか10~100個程度のノロウイルスが体内に入っただけでも感染してしまいます。
- ■流行の特徴と主な症状
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ノロウイルスが原因で発症する感染性胃腸炎や食中毒は、年間を通して報告されています。
特に冬は全国的に、増える傾向が見られます。
潜伏期間は1~2日程度。主な症状は吐き気、嘔吐、下痢です。軽い発熱に加え、腹痛、頭痛、悪寒、筋肉痛、のどの痛み、倦怠感などを伴うことがあります。症状は全般的に軽めで、通常は2~3日でよくなります。ただし、高齢者や子ども、病弱な人は、嘔吐・下痢による脱水や窒息、誤嚥性肺炎などで死に至ることもあるため、注意が必要です。
現在、ノロウイルスに効く抗ウイルス薬やワクチンはありません。そのため治療は原則、症状を楽にするための対症療法です。脱水症状を防ぐ目的で点滴などが行われる場合もあります。
感染経路
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ノロウイルスに汚染された食品を食べて口から感染する場合がほとんどです。食中毒が起きても原因の食品を特定できないことが多いのですが、例えばカキなどの二枚貝、サラダやサンドイッチなどの非加熱食品、水や氷などが考えられます。
- 感染者の便や吐物に触った手指を介して、ノロウイルスが口から入ってしまうことで感染します。便や吐物との接触だけでなく、感染者が触れたものに間接的に触れることでも感染する可能性があります。
- 感染者の便や吐物を処理する際などに、飛び散ったノロウイルスを吸い込むことで感染します。
- 感染者の便や吐物を処理が不十分で残っていると、それらが乾燥して細かい粒子となって空気中を漂い、経口感染することがあります。
ノロウイルスの予防・対策のポイント
感染しない/拡げないために
基本は手洗い
もっとも重要な対策は手洗いです。アルコールは効きにくいため、石けんと流水でしっかり洗ってください。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
加熱調理
ウイルスは熱に弱いため、加熱調理は有効な手段の一つです。ノロウイルスの汚染のおそれのある貝類や野菜などの食材は、85~90℃で90秒以上加熱してから食べるように心がけてください。
⇒「食中毒に注意しましょう!」はこちら
⇒「食材・食品別 食中毒の予防法」についてはこちら
⇒「細菌やウイルスによる食中毒って何があるの?」はこちら
調理道具の手入れ
調理器具は十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウムで消毒を。まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は、熱湯による加熱(85℃で1分以上)が有効です。
⇒「キッチンを清潔に保つための洗浄や消毒」についてはこちら
感染者のケアをする場合
自宅や施設で感染者のケアをする時は、感染を広げないように注意しましょう。標準予防策※に加え、飛沫感染・接触感染のための対策が必要です。
※標準予防策:感染の有無に関わらず、感染源となりうるものに対して感染の可能性があると想定して対応する方法。
手洗いは感染予防の基本
汚染を拡げないために流水と石けんでの手洗いを徹底しましょう。手洗いをしても爪などに細菌やウイルスなどが残っていることがあります。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
ケア時はマスク・ビニルエプロン(ガウン)・手袋の着用
ケアをする時は、飛沫やしぶきを吸い込んだり、衣服が汚れないようにするために
マスク・エプロン・手袋を着用し、細菌・ウイルスに直接触れないようにしましょう。
次のものは感染源となる可能性があります。
① 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
② 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
③ 使用した器具・器材(注射針・ガーゼ等)
これらに触れる可能性がある時は、必ず手袋を着用しましょう。同じ人のケアでも、排泄物や創傷皮膚に触れた後は手袋を交換してください。
手袋やエプロンを脱いだ後は、手指消毒が必要です。
⇒マスク・エプロン・手袋、着脱のタイミングと使用方法のチェックシートはこちら
嘔吐物や便の処理
嘔吐物や便を掃除するときは、使い捨てのエプロンとマスクと手袋を着用し、汚物中のウイルスが飛び散らないように、静かに拭き取ります。床に付着した便や吐物は次亜塩素酸ナトリウムで拭き取ってください。また、ノロウイルスは乾燥すると空中に漂い、空気感染することがありますから、取り残しのないように速やかに処理することも重要です。
⇒嘔吐物の処理方法動画はこちら
寝具や衣類の洗濯
嘔吐物や便が付着したシーツなどは、しぶきが飛び散らないように、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします。本来なら熱水による洗濯(85℃で1分間以上)が適していますが、熱水が使えない洗濯機であれば、水洗いした後、次亜塩素酸ナトリウムで消毒を。また、高温の乾燥機を使えば殺菌効果が期待できます。布団などすぐに洗濯できないものは、よく乾燥させてスチームアイロンや布団乾燥機を使うと効果的です。下洗いした場所は、次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、洗剤を使って掃除してください。
次亜塩素酸ナトリウムは漂白作用があるので、色物・柄物を消毒する際にはご注意ください。
室内や日用品の消毒
ドアノブやスイッチなど、よく触れる場所は、消毒用エタノールによる二度拭きか、次亜塩素酸ナトリウムで消毒を。
感染者が使った食器類も、次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。トイレ・風呂が汚れた場合はすぐに掃除をして清潔に保ちましょう。
ノロウイルスに効果的な消毒
ノロウイルスは「ノンエンベロープウイルス」のため、次亜塩素酸ナトリウムが有効です。
アルコールは十分な効果が期待できません。
消毒薬使用時には、適用する素材や効果を確認しましょう。
次亜塩素酸ナトリウムの濃度につきましては、塩素濃度約200〜1000ppm(0.02%から0.1%)が有効とされています。
なお、次亜塩素酸ナトリウムは、酸性の洗浄・漂⽩剤、シアヌール酸系の製品と混合すると塩素ガスが発⽣して危険ですので、注意してご使⽤ください。
⇒「次亜塩素酸ナトリウム製剤の特徴と注意点」について詳細はこちら
FAQ
下痢止め薬を飲んでも大丈夫ですか?
おう吐や下痢は、体に侵入した病原体を排除しようとする体の防御反応です。特に下痢止めは、病原体の排出が止まって、症状を悪化させるおそれもあります。症状をおさえる薬は医師の指示に従って飲むようにしましょう。
「おう吐と下痢・腹痛が同時に来るのはなぜ?」はこちら
牡蠣などの二枚貝を食べていなくても、ノロウイルスに感染することはありますか?
ノロウイルスは食品以外からも感染することがあります。
感染者の便や吐物に触った手指からや、それらを処理する際に飛び散ったウイルスを吸い込み感染することもあります。
また、ノロウイルスは症状が治まった後も1週間から1カ月程度、便の中に排泄されるため、注意が必要です。
主な感染経路はこちら
食品にアルコール噴霧すれば、ノロウイルスは予防できますか?
食品に直接アルコールを噴霧しても消毒ムラも発生し、除菌効果はありません。また、ノロウイルスはノンエンベロープウイルスのため、アルコール消毒はあまり効果がありません。食品は加熱調理を行い、調理器具など感染者が使用したものは次亜塩素酸ナトリウムや熱湯による消毒を行いましょう。
ノロウイルスの予防・対策のポイントはこちら
関連情報(下記サイトを参考・編集し作成)
- <厚⽣労働省ホームページより>
「ノロウイルスに関するQ&A」 - http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
- <国⽴感染症研究所 ホームページより>
「ノロウイルス感染症」 - https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/na/norovirus.html
- 「感染性胃腸炎とは」
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/intestinal.html
- ノロウイルス等検出速報
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-noro.html
- <⽶国 CDCのホームページより>
「ノロウイルス」 - http://www.cdc.gov/norovirus/index.html
- 「最新のノロウイルスのアウトブレイクの管理と疾病予防のガイドライン」
- https://www.cdc.gov/mmwr/pdf/rr/rr6003.pdf
- <東京都福祉保健局公式ホームページより>
「社会福祉施設等におけるノロウイルス対応標準マニュアル」 - http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/noro/manual.html
- <東京都感染情報センター ホームページより>
「ノロウイルス対策緊急タスクフォース」 - http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/gastro/noro_task/
作成日:2023年12月