「MRSA
(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) 感染症」
ってどんな感染症?MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
- 症状 ▶︎症状 ▼
-
- 発熱
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 皮膚の赤み・腫れ・痛み
- 傷口の化膿
- 血圧低下
- 腹部膨満
- 意識障害
- ※疾患により異なる
MRSAは、日本語で「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」という細菌です。
もともとの黄色ブドウ球菌は、健康なヒトの常在菌であり、皮膚や鼻の中、のど、腸管などに存在するありふれた細菌です。通常、健康な人には無害ですが、傷口に感染すると化膿の原因になることがあります。
しかし、MRSAはメチシリンなどのペニシリン剤をはじめとして、β-ラクタム剤、アミノ配糖体剤、マクロライド剤などの多くの薬剤に対し多剤耐性を示します。つまり、通常細菌を退治するために使われる抗生剤(抗生物質)が効きにくくなった黄色ブドウ球菌です。MRSAが体の弱った人の体内に入ると、さまざまな疾患を引き起こしたり、病気が重くなったりすることがあります。
MRSAは病院や老人ホームなどに多く存在しており、医療関連感染(院内感染症)の主な原因となっています。薬剤耐性菌といえばMRSAというくらい、古くから知られている感染症ですが、最近では、健康な人にも感染する市中感染型MRSAもあらわれています。感染症法では5 類感染症・基幹定点把握疾患に分類されます。
- ■流行の特徴と主な症状
-
- ー MRSAの分類と流行の特徴
-
① 院内感染型では、入院歴やカテーテルの使用、透析などの医療行為に関わる患者に多くみられます。
② 市中感染型(医療施設の外で感染)では、子どもや若い世代の健康な人の皮膚感染のほか肺炎の報告症例もあります。学校での流行にも注意が必要です。 - ー MRSAの症状
-
MRSAの病原性は黄色ブドウ球菌と同程度で、健康な人には通常無害です。しかし、高齢者など抵抗力の弱い人がMRSAに感染すると重篤な症状を引き起こすことがあります。
MRSA感染症も通常の黄色ブドウ球菌感染症と同様の症状がみられます。皮膚の切り傷・刺し傷にともなう化膿症、毛嚢炎、おでき、手術後の二次感染といった皮膚組織の感染症から、肺炎、腹膜炎、敗血症、腸炎、髄膜炎などにいたるまでさまざまな重症感染症の原因となります。
したがって症状もさまざまで、皮膚の患部の赤み、腫れ、痛み、うみ、突然の高熱、血圧低下、腹部膨満、下痢、意識障害、白血球減少、血小板減少、腎機能障害、肝機能障害などの症状を示します。
どのように感染するの?
- ■主な感染経路
-
-
手指を介した接触感染が主な原因です。
MRSAを持っている人や患者が触ったものや唾液などを経由して感染します。
患者の処置をした人の衣服や物からも、感染が広がります。
-
MRSA感染症の予防・対策のポイント
感染しない/拡げないために
基本は手洗い・手指消毒
MRSAは人から人へ、手指を介して伝播していきます。病院を受診した際や、病院・老人施設に面会に行く際は、手洗いや手指消毒をしっかり行うなど、施設の注意事項に従いましょう。
健康な人は感染の心配はほとんどありませんが、ひんぱんに通院していたり、入院したりしている高齢者などでは、気づかない間に鼻腔にMRSAが生息していることも考えられます。
手洗いは感染予防の基本です。流水と石けんで十分に手を洗います。また、アルコール手指消毒薬も効果があります。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
感染者のケアをする場合
通常、病院や老人施設では、MRSAの感染が病院内で広がらないようにする手立てを講じています。自宅で介護を行なっている家族の方も、標準予防策※に加え、接触感染のための対策が必要です。
※標準予防策:感染の有無に関わらず、感染源となりうるものに対して感染の可能性があると想定して対応する方法。
ケアの前後は手洗い
感染予防の基本。流水と石けんで十分に手を洗い、タオルの共用はひかえます。また、アルコール手指消毒薬も効果があります。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
ケア時はマスク・エプロン(ガウン)・手袋の着用
ケアをする時は、マスク・エプロン・手袋を着用し、細菌に直接触れないようにしましょ
う。
次のものは感染源となる可能性があります。
① 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
② 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
③ 使用した器具・器材(注射針・ガーゼ等)
これらに触れる可能性がある時は、必ず手袋を着用して取り扱いましょう。同じ人のケアでも、排泄物や創傷皮膚に触れた後は手袋を交換してください。
手袋やエプロンを脱いだ後は、手指消毒が必要です。
⇒マスク・エプロン・手袋、着脱のタイミングと使用方法のチェックシートはこちら
室内物品の消毒
院内感染対策として、ドアノブ、手すりなど手が触れる場所の清掃・消毒により院内の環境を清潔に保つことや、人工呼吸器などの医療器具の消毒や手洗いを徹底することが重要とされています。同様に、家庭でも介護をする際には、ケアで使用する・した物品の消毒を行いましょう。
⇒医療器具・物品の消毒についてはこちら(丸石製薬 医療関係者向情報サイトへリンクします)
MRSA感染症に効果的な消毒
感染者が目や顔を触った手で触れたものや環境は、対象物にあわせて、
アルコール、次亜塩素酸ナトリウム、熱水による消毒を行いましょう。
次亜塩素酸ナトリウムの濃度につきましては、塩素濃度約200〜1000ppm(0.02~0.1%)が有効とされています。
なお、次亜塩素酸ナトリウムは、酸性の洗浄・漂⽩剤、シアヌール酸系の製品と混合すると塩素ガスが発⽣して危険ですので、注意してご使⽤ください。
⇒「次亜塩素酸ナトリウム製剤の特徴と注意点」について詳細はこちら
FAQ
「日和見(ひよりみ)感染」とは?
健康な人に対しては病原性を発揮しない病原体が、感染抵抗性が低下した時に病原性を発揮して感染すること。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌もその病原体の一つで、新生児・高齢者・術後患者などは感染しないよう注意が必要です。
感染対策のポイントはこちら
MRSA感染症はどのように感染しますか?
接触感染によって感染し、病院や高齢者施設などでは、介護者が感染を広げる可能性もあります。
原因菌である黄色ブドウ球菌は主に鼻腔、口腔、皮膚に存在します。そのため、口腔ケアや気道吸引などを行う時は、特に感染対策に注意する必要があります。手洗いの実施や適切な消毒を行いましょう。
MRSAに効果的な消毒についてはこちら
MRSA感染症にかかると、どのような症状がでますか?
あらわれる症状は様々です。外傷に伴う化膿、炎症といった皮膚にあらわれる症状から、発熱、下痢、肺炎、腸炎、敗血症、髄膜炎、意識障害など全身に症状が出る場合もあります。
関連情報(下記サイトを参考・編集し作成)
- 国立感染症研究所 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/474-mrsa.html
- 国立感染症研究所 ブドウ球菌食中毒
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/511-aureus.html
- 厚生労働省感染症・予防接種情報 48メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
- https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-41-01.html
- 厚生労働省 標準的な感染予防策
- https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/070508-5_0002.pdf
- MRSA感染症の治療ガイドライン 改訂版2019
- https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/guideline_mrsa_2019revised-booklet.pdf
- 国立国語研究所 病気の意味をわかりやすくする提案 13.MRSA/MRSA感染症
- https://www2.ninjal.ac.jp/byoin/teian/ruikeibetu/teiango/teiango-ruikei-a/mrsa.html
作成日:2023年10月