「エイズ」
ってどんな感染症?
「エイズ」ってどんな感染症?
主な症状
- 症状 ▶︎症状 ▼
-
- 発熱
- リンパ節の腫れ
- のどの痛み
- 発疹
- 頭痛
- 下痢
- 嘔吐
- 筋肉痛
- 関節痛
- ※感染初期(主に急性期の初期症状のこと)
- ■流行の特徴と主な症状
-
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、ヒトの免疫力を低下させるウイルスで、免疫のしくみの中心であるヘルパーTリンパ球(CD4細胞)という白血球などに感染します。
HIVに感染するとウイルス量が増殖し、数週間かけて血液中にHIV抗体ができます。
このとき発熱やリンパ節の腫れなどインフルエンザに似た症状が出ることがありますが、自然に軽快します。
その後は、自覚症状のないまま「無症候期」が数年から十数年間続きます。無症状の期間にも、HIVは体の免疫力を低下させていきます。
さらに進行すると、疲れやすい、熱が出やすい、下痢をしやすいなどの症状が出ることがあります。
そして本来なら自分の力で抑えることのできる日和見感染症(カリニ肺炎、カンジダ症など)や悪性腫瘍などを発症するようになります。
この発症した状態を「エイズ(AIDS:Acquired Immunodeficiency Syndrome)」といいます。
- ■治療によって感染しなくなる?「U=U」とは
-
HIV感染症/エイズの治療方法は大きく進歩し、早期に発見してきちんと服薬しさえすれば、ウイルス量を抑え込むことができるようになりました。つまり、HIV感染は必ずしもエイズに至る病気ではなくなったということ。早期発見・早期治療ができれば、感染していない人と同じように長く健康的に生活できるようになっています。
効果的な抗HIV薬による治療を受けると多くの場合、血液中のHIV量が検出限界値未満(Undetectable)にまで減少します。この状態を6ヵ月以上持続できていれば、性行為(セックス)によって相手にHIVを感染させるリスクはゼロ(Untransmittable)となります。これがU=U(Undetectable=Untransmittable)の状態です。
一方で、現在もおよそ3割がHIV感染判明時にすでにエイズを発症しています。HIVは検査をすることでしか確認できません。症状ではわからないことも見逃されやすい要因の1つになっています。HIVは主に性行為で感染します。感染経路を正しく理解して、常に感染を防ぐ方法を実行することや不安がある場合には検査を受けることが大切です。
- ■HIVの種類
-
HIVはレトロウイルス科に分類されるRNAウイルスです。HIVは遺伝子配列によって世界中で流行している「HIV-1」と西アフリカで流行している「HIV-2」の2タイプに分けられます。HIV-2は発病までの潜伏期間が長く、血漿中のウイルス量が少ないことや進行が遅いことが特徴です。近年は日本でもHIV-2感染例が報告されています。
どのように感染するの?
- ■主な感染経路
-
-
HIVは主に血液や精液、腟分泌液に多く含まれており、性行為により、相手の性器や肛門、口などの粘膜や傷口を通じて感染します。最も多い感染経路で、特に同性間の性的接触での感染が多くなっています。
-
HIVが混入した血液により感染します。覚醒剤などの違法薬物の回し打ちによる注射器具の共用などで感染するケースです。国内で製造される血液製剤は、製造の際にHIV検査が行われており、血液製剤からの感染の可能性は極めて低くなっています。また、医療機関で使用している注射針はすべて使い捨てまたは消毒済みです。
-
母親がHIVに感染している場合、妊娠中や出産時に赤ちゃんに感染することがあります。ただし、母親が抗HIV薬を服用することや母乳を与えないなどの対策で、赤ちゃんへの感染を1%以下に抑えることができます。
エイズの予防・対策のポイント
感染しない/拡げないために
血液を介した感染を防ぐ
血液や体液がついた器具・物品は、むき出しにならないようにしっかり包んで捨てるか、汚染を洗浄・除去してから消毒を行います。
器具・物品に目に見える汚れがある場合は、手袋・ガウン・ゴーグルを着用し、流水でよく洗い流してください。消毒が必要な場合は浸漬消毒を行った後に水洗いし薬剤を除去してから、清潔な環境で乾燥させます。水に濡らすことができないものは薬液を含ませた布や不織布などで清拭消毒を行ってください。
また物品使用上の注意点として、歯ブラシやカミソリは血液・体液が付着するため、共用は避ける必要があります。
性行為による感染を防ぐ
肛門を使用する性行為(アナルセックス)や口を使用する性行為(オーラルセックス)や、皮膚・粘膜に傷をつけるような性行為は、感染のリスクが高まるので避けましょう。性的接触の際は、コンドームを必ず着用し、かつ正しく使用することが感染予防に有効です。エイズ患者やエイズ感染が疑われる人との性的接触や、不特定多数との性行為を避けることも感染リスクの低減につながります。
感染者のケアをする場合
自宅や施設で感染者のケアをする時は、感染を広げないために標準予防策※が必要です。
※標準予防策:感染の有無に関わらず、血液、体液は感染の可能性があると想定して対応する方法。
ケアの前後は手洗い
感染予防の基本。流水と石けんで十分に手を洗い、タオルの共用はひかえます。
また、アルコール手指消毒薬も効果があります
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
ケア時はマスク・エプロン(ガウン)・手袋の着用
ケアをする時は、マスク・エプロン・手袋を着用し、感染源となるものに直接触れないようにしましょう。
次のものは感染源となる可能性があります。
① 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
② 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
③ 使用した器具・器材(注射針・ガーゼ等)
これらに触れる可能性がある時は、必ず手袋を着用するのが基本です。血液や体液が飛散してくる可能性のある場合には、マスクやゴーグル、エプロンが必要です。手袋やエプロンを脱いだ後は、手指消毒が必要です。
⇒マスク・エプロン・手袋、着脱のタイミングと使用方法のチェックシートはこちら
FAQ
HIVは主にどこに存在しますか?
HIVに感染した人の血液や精液、膣分泌物などに多く含まれています。これらが直接体の中に入れば、HIVに感染する可能性があります。
性的接触の際、コンドームを使用すれば
100%安全ですか?
コンドームを正しく使用すれば、HIV感染は、ほぼ100%防ぐことができるとされています。
安全な性行為を心がけ、以下の注意点を守りましょう。
- 性行為のはじめから終わりまでコンドームを着用する(オーラルセックスやアナルセックスのときも)
- コンドームは使用期限を守り、破損のないものを正しくつける
- 使用後のコンドームは口をしばって捨てる
- 潤滑ゼリーやローションを使用する際には、水溶性のものを選ぶ
油性のベビーオイルなどを使うと破損の原因に - 出血したり傷をつけたりするような行為はしない
- 月経中は性行為をしない
- 不特定多数の人と性行為をしない、パートナーを限定する
HIVはトイレやプールなどでも感染しますか?
HIV自体の感染力は弱く、血液や体液を介しての接触がない限り、通常の社会生活の中で感染する可能性はまずありません。
トイレの便座やプールに限らず、お風呂、電車やバスのつり革、ドアノブ、食器等の共用などからも感染することはありません。
関連情報(下記サイトを参考・編集し作成)
- 国立感染症研究所:AIDS(後天性免疫不全症候群)とは
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/400-aids-intro.html
- 国立感染症研究所:IASR HIV/AIDS 2022年
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/b-virus-m/1066-idsc/iasr-topic/12325-524t.html
- 吉田眞一、他編:戸田新細菌学,改訂34版.南山堂,2013,688
CDC:Public Health Image Library (PHIL) - https://phil.cdc.gov/Details.aspx?pid=10860
- 令和4年度厚生労働省行政推進調査事業費補助金エイズ対策政策研究事業, HIV河川症及び血友病における
チーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究班:抗HIV治療ガイドライン:2023年3月 - https://hiv-guidelines.jp/index.htm
- CDC:Updated U.S. Public Health Service Guidelines for the Management of Occupational Exposures to HIV and Recommendations for Postexposure Prophylaxis
- https://stacks.cdc.gov/view/cdc/20711
- 厚生労働省健康局結核感染症課長通知:感染症法に基づく消毒・滅菌の手引きについて
- https://www.mhlw.go.jp/content/000548441.pdf
- 国公立大学附属病院感染対策協議会データ:病院感染対策ガイドライン2018年度版(2020年3月増補版)より
- https://kansen.med.nagoya-u.ac.jp/general/general.html
- 厚生労働省行政推進調査事業(エイズ対策政策研究事業)HIV感染症の医療体制の整備に関する研究班:HIV感染透析患者医療ガイド:2019年3月1日
- http://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/doc_m_and_g/20190301_hiv_guide.pdf
作成日:2025年03月