「肺炎球菌感染症」
ってどんな感染症?
- 症状 ▶︎症状 ▼
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- 倦怠感
- 頭痛
- 発熱
- 悪寒
- のどの痛み せき•たん
- 鼻水•鼻づまり
- 耳痛・耳漏
- 食欲不振
- 呼吸困難
- 意識障害
肺炎球菌感染症とは、肺炎球菌という細菌によって引き起こされる感染症です。肺炎球菌はもともと鼻やのどなどの人の体にいる常在菌で、乳幼児では鼻やのどの奥に20〜50%の高頻度で常在し、成人では3〜5%に常在しているとされます。症状が出るまでの潜伏期間は状況により異なり、保菌している間は感染の可能性があります。
ただし、保菌者のすべてが発症するわけではなく、多くの人は肺炎球菌を持っていても症状がない状態で通常暮らしています。しかし、風邪のウイルスなどによって鼻やのどに炎症が起こると、鼻やのどの菌が増殖し、二次的に咽頭炎、扁桃炎、中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、ときに血液中に菌が入り、侵襲性肺炎球菌感染症とよばれる菌血症を伴う肺炎、髄膜炎などを引き起こします。小児では中耳炎や咽頭炎、扁桃炎、乳幼児、特に2歳以下では髄膜炎を起こりやすいとされています。なお、健常者では肺炎を起こすことはあまりありません。
中耳炎や副鼻腔炎は、症状によってペニシリン系などの抗菌薬で治療します。肺炎や髄膜炎は、ペニシリン系、セフェム系などの抗菌薬で治療します。ただし、最近では抗菌薬に対する耐性菌も報告されているため、耐性菌に有効な抗菌薬が使用されます。発症や重症化を予防するため、高齢者や感染のリスクのある方、小児にはワクチンの接種が重要です。
- ■流行の特徴と主な症状
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年齢別で見ると、かかることが多いのは免疫がまだうまく働いていない5歳未満の乳幼児(とくに2歳未満)や加齢により免疫が低下しはじめている65歳以上の方です。
- ー 小児
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小児が髄膜炎をきたした場合には2%の子どもが亡くなり、生存した子どもの10%に難聴、精神発達遅滞、四肢麻痺、てんかんなどの後遺症を残すといわれています。
- ー 高齢者
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肺炎は日本人の死亡原因の第5位であり、日常に生じる成人の肺炎のうち1/4〜1/3は肺炎球菌が原因と考えられています。
このほかに64歳以下でも、糖尿病・心疾患・呼吸器疾患などの基礎疾患がある方や喫煙者はかかりやすくなるので注意が必要です。侵襲性肺炎球菌感染症は、がん患者さんのような免疫力の落ちた方や手術などで脾臓を摘出した患者さんもリスクが高くなることが知られています。
肺炎球菌は、感染した体の場所により症状や経過が異なります。通常は突然の発熱と全身の倦怠感が起こり、肺炎を起こした場合にはせきや胸の痛み、血の混じったたんが出ます。高齢者ではこれらの症状がはっきりしない場合があり注意が必要です。髄膜炎では、発熱、頭痛、けいれん、意識障害が起こったり、首が動かしにくくなるなどの症状がみられます。
どのように感染するの?
- ■主な感染経路
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- くしゃみやせきによって、細菌を含んだしぶきが飛び散り、それを吸い込いこむことで家庭内や集団内に広がります。
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保菌者の鼻水や鼻水などで汚染されたものに他の人の手が触れ、鼻や口を触ることでも広がる可能性があります。
肺炎球菌感染症の予防・対策のポイント
感染しない/拡げないために
予防ワクチンが最重要
肺炎球菌ワクチンの適応がある方はワクチンを接種しましょう。
定期接種の対象者は下記です。
詳しくは医療機関やお住まいの自治体にお問い合わせください。
- ー 小児
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初回接種については生後2ヵ月以降(~7ヵ月まで)の間に接種を開始し、27日以上の間
隔をおいて3回、追加接種については初回接種終了後に3回目の接種を行ってから60日
以上の間隔をおいて1回の接種を行います。 - ー 高齢者
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65歳以上の高齢者と、65歳未満では慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、糖尿病などの病気を持っている方が対象。23価肺炎球菌ワクチンの効果は約5年間であり5年ごとの接種が推奨されます。
65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳および100歳以上の方は公費により接種費用が補助されます。
また、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの両方を接種することで、肺炎にかかりにくくなり重症化を防ぐことが期待できます。
手洗い・せきエチケットなど
日常の感染予防
感染予防の基本です。流水と石けんで十分に手を洗い、タオルの共用はひかえます。また、
アルコール手指消毒薬も効果があります。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
かぜ症状があるときやせきやくしゃみが出るときは、マスクをつけましょう。マスクをし
ていないときに出そうになったら、ティッシュや腕で、口と鼻をおおってください。もしも
手のひらで口や鼻をおおってしまったら、すぐに手洗いを。
歯磨き・うがいなどで口腔内を清潔に
歯磨き・うがいなどの口腔ケアにより口の中の細菌を減らすことで、細菌の誤嚥や肺炎の発症を減らすことができます。
禁煙する
喫煙は肺炎の発症・悪化や死亡の原因になっています。禁煙することでリスクは軽減します。
人ごみを避ける
高齢者や基礎疾患のある方は発病しやすいので、病気がうつりやすい人ごみを避けるようにしましょう。かぜやインフルエンザにかかっている人からは距離を置くようにしましょう。
栄養管理
高齢者の低栄養は、免疫力が低下して肺炎にかかりやすくなります。たんぱく質豊富で栄養バランスが取れた食事を心がけます。誤嚥を防ぐために、噛む能力に合わせた食事を選びましょう。
感染者のケアをする場合
自宅や施設で感染者のケアをする時は、感染を広げないように注意しましょう。標準予防策※に加え、飛沫感染・接触感染のための対策が必要です。
※標準予防策:感染の有無に関わらず、感染源となりうるものに対して感染の可能性があると想定して対応する方法。
手洗いは感染予防の基本
流水と石けんで十分に手を洗い、タオルの共用はひかえます。また、アルコール手指消毒薬も効果があります。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
ケア時はマスク・ビニルエプロン(ガウン)・手袋の着用
ケアをする時は、飛沫やしぶきを吸い込んだり、衣服が汚れないようにするために
マスク・エプロン・手袋を着用し、細菌・ウイルスに直接触れないようにしましょう。
次のものは感染源となる可能性があります。
① 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
② 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
③ 使用した器具・器材(注射針・ガーゼ等)
これらに触れる可能性がある時は、必ず手袋を着用しましょう。同じ人のケアでも、排泄物や創傷皮膚に触れた後は手袋を交換してください。
手袋やエプロンを脱いだ後は、手指消毒が必要です。
⇒マスク・エプロン・手袋、着脱のタイミングと使用方法のチェックシートはこちら
換気
咳のしすぎや体調悪化により、嘔吐してしまった時などの処理を行う際は、窓をあけ十分な換気が必要です。
肺炎球菌感染症に効果的な消毒
感染者が目や顔を触った手で触れたものや環境は、対象物にあわせて、
アルコール、次亜塩素酸ナトリウム、熱水による消毒を行いましょう。
次亜塩素酸ナトリウムの濃度につきましては、塩素濃度約200〜1000ppm(0.02%から0.1%)が有効とされています。
なお、次亜塩素酸ナトリウムは、酸性の洗浄・漂⽩剤、シアヌール酸系の製品と混合すると塩素ガスが発⽣して危険ですので、注意してご使⽤ください。
⇒「次亜塩素酸ナトリウム製剤の特徴と注意点」について詳細はこちら
FAQ
肺炎球菌ワクチン、接種の効果は?
ワクチン接種により、肺炎球菌(ワクチンに含まれる種類のもの)が血液や髄液から検出されるような重篤な肺炎球菌感染症にかかるリスクを95%以上減らすことができると報告されています。
定期接種のタイミングや注意点はこちら
肺炎球菌ワクチンの副反応は?
発熱や、注射部位の紅斑や膨張がよく見られます。その他にも食欲減退や蕁麻疹などの症状も現れる可能性があります。ワクチン接種後の気になる症状は、医師に確認してください。
ワクチン接種による重い副反応がでた場合は、救済制度があります。
くわしくはこちら
肺炎球菌感染症のかかりやすい年齢は?
肺炎球菌感染症の年間報告数は2018年と2019年は約3,300人、2020年以降の報告数は減少し、1,654人でした。どの年も0~4歳と65歳以上の報告が多く、重症化しないように注意が必要です。
感染対策のポイントはこちら
関連情報(下記サイトを参考・編集し作成)
- 厚生労働省 感染症情報 肺炎球菌感染症(高齢者)
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/haienkyukin/index_1.html
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/202104201412158914.pdf - 厚生労働省 感染症情報 肺炎球菌感染症(小児)
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/pneumococcus/index.html
- 国立感染症研究所 肺炎球菌感染症 2022年現在
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/pneumococcal-m/1372-idsc/iasr-topic/11763-515t.html
- 国立感染症研究所:ペニシリン耐性肺炎球菌感染症
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/473-prsp.html
- 国立感染症研究所:感染症法に基づくペニシリン耐性肺炎球菌(Penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae: PRSP感染症の届出状況、2018年
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/prsp-m/prsp-idwrs/9784-prsp-191227.html
- FORTH(厚生労働省検疫所)
- https://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name63.html
- こどもとおとなのワクチンサイト(日本プライマリ・ケア連合学会)
- https://www.vaccine4all.jp/topics_I-detail.php?tid=44
- 国立がん研究センター東病院
- https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/infectious_control/020/020/20181002161135.html
- ストップ!肺炎(日本呼吸器学会)
- https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines//file/stop_pneumonia_2021.pdf
- 平成 30 年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)高齢者施設等における感染症対策に関する調査研究事業 高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版
- https://www.mhlw.go.jp/content/000500646.pdf
- 厚生労働省 保育所における感染症対策ガイドライン(2018 年改訂版)
- https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000201596.pdf
作成日:2023年4月