「腸管出血性
大腸菌感染症」
ってどんな感染症?
「腸管出血性大腸菌感染症」
ってどんな感染症?
主な症状
- 症状 ▶︎症状 ▼
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- 嘔吐
- 下痢・腹痛
- 発熱
腸管出血性大腸菌感染症とは、食中毒の原因として知られる、強い感染力を持つO157やO26などの腸管出血性大腸菌による感染症です。
感染症に関する法律で、3類感染症に指定されています。
- ■流行の特徴と主な症状
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初夏〜初秋の気温が高い時期に、生肉の加熱不足などが原因で腸管出血性大腸菌による食中毒が増える傾向にありますが、気温の低い冬場にも発生します。また、肉だけではなく、生野菜を食べて感染したケースもあります。腸管出血性大腸菌に汚染された飲食物を口にすると、多くの場合、3〜8日の潜伏期を経て激しい腹痛や水様便(水っぽい下痢)で発病します。その後著しい血便となることがあり、これが出血性大腸炎です。発熱は37℃台で、高熱になることはあまりありません。
子どもや高齢者は、溶血性尿毒症症候群(急性腎不全の一種)、脳症(けいれんや意識障害)を発症する割合が比較的高く、重症化しやすいので注意が必要です。これらは後遺症が残る可能性があり、死に至ることもあります。
下痢に対する治療は、安静、水分補給、消化のよい食事が基本です。下痢止めは、毒素の排泄を妨げてしまうので基本的に使いません。
- 代表的な腸管出血性大腸菌「O(オー)157」の特徴
- O157は牛、豚などの大腸をすみかとする腸管出血性大腸菌のなかで最も多い型です。ほかに、O26、O111などがあります。
わずか50~100個の菌量でも食中毒を起こすほどの感染力があり、温かくて栄養分と水分のあるところで活発になる一方、熱には弱く、75℃で1分間加熱すれば死滅します。ただし低温には強いので冷蔵庫に入れても死滅しません。酸性にも強く、口から入ったO157は胃酸に負けずに生き残り、大腸で増殖します。
どのように感染するの?
- ■主な感染経路
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腸管出血性大腸菌に汚染された飲食物を介して口から感染します。井戸水を介して感染することもあります。
- 感染者の便で汚染されたものに触れた手を介して起こる二次感染が多いのも特徴です。
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腸管出血性大腸菌感染症の予防・対策のポイント
感染しない/拡げないために
基本は手洗い
もっとも重要な対策は手洗いです。トイレの後、調理前後、食事の前、
下痢をしている人のケアをした後等は、石けんと流水でしっかり洗ってください。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
生鮮食品は新鮮なものを買う
生鮮食品は新鮮なものを買い、早めに持ち帰ってすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
冷蔵庫を過信しない
冷蔵は10℃以下、冷凍は-15℃以下に設定し、肉、魚、野菜は別々に保存を。冷蔵・冷凍で細菌が死ぬわけではないので、過信せず早めに食べてしまうことが大切です。
調理済みの料理は、食べる前に再加熱してください。
加熱調理
食品を介した感染を防ぐには、加熱調理をしっかりすることが基本です。中心部の温度が75℃以上・1分間以上の加熱が効果的です。外食でも、生肉や肉の加熱が十分ではないメニューは、なるべく避けたほうが安全です。また、焼肉やバーベキューなど、自分で肉を焼きながら食べる場合も、十分加熱して、生焼けのまま食べないようにしましょう。
野菜の腸管出血性大腸菌を除菌するには、湯がき(100℃の湯で5秒間程度)が有効であるとされています。
⇒「食中毒に注意しましょう!」はこちら
⇒「食材・食品別 食中毒の予防法」についてはこちら
⇒「細菌やウイルスによる食中毒って何があるの?」はこちら
汚染を広げない
調理をする時、肉から手や調理器具を介して、野菜など他の食材を汚染させてしまう場合があります。
つまり、せっかく肉を加熱しても、汚染したサラダなどを食べると、食中毒を起こすということになります。
手や調理器具、また、ふきんなどは、こまめに洗浄や消毒・交換をしましょう。
また、肉や魚と野菜類などを扱うまな板・包丁などを分けるというのも一つの手段です。
⇒「キッチンを清潔に保つための洗浄や消毒」についてはこちら
感染者のケアをする場合
自宅や施設で感染者のケアをする時は、感染を広げないように注意しましょう。
標準予防策※に加え、接触感染のための対策が必要です。
※標準予防策:感染の有無に関わらず、感染源となりうるものに対して感染の可能性があると想定して対応する方法。
ケアの前後は手洗い
感染予防の基本。流水と石けんで十分に手を洗い、タオルの共用はひかえます。
また、アルコール手指消毒薬も効果があります。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
ケア時はマスク・エプロン(ガウン)・手袋の着用
ケアをする時は、マスク・エプロン・手袋を着用し、細菌・ウイルスに直接触れないようにしましょう。
次のものは感染源となる可能性があります。
① 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
② 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
③ 使用した器具・器材(注射針・ガーゼ等)
これらに触れる可能性がある時は、必ず手袋を着用して取り扱いましょう。同じ人のケアでも、排泄物や創傷皮膚に触れた後は手袋を交換してください。
手袋やエプロンを脱いだ後は、手指消毒が必要です。
⇒マスク・エプロン・手袋、着脱のタイミングと使用方法のチェックシートはこちら
寝具や衣類の洗濯
感染した人が使ったシーツ、タオル、衣類などの消毒は、80℃で10分間以上の熱での消毒、あるいは洗浄後に200〜500ppm(0.02~0.05%)次亜塩素酸ナトリウムで、30分間つけ置きしてから、家族のものとは別に洗濯します。
次亜塩素酸ナトリウムは漂白作用があるので、色物・柄物を消毒する際はご注意ください。
室内物品や日用品の消毒
感染した人が使ったトイレの便座や水洗レバー、ドアノブ、また室内のドアノブ、手すりなど手が触れる場所の清掃・消毒により環境を清潔に保つことや、使用後の器具の消毒が重要とされています。
家庭で介護をする際には、ケアで使用する・した物品の消毒を行いましょう。
学校・幼稚園・保育園では?
病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで出席停止。
⇒その他注意すべき感染症はこちら
腸管出血性大腸菌に効果的な消毒
感染者が目や顔を触った手で触れたものや環境は、対象物にあわせて、
アルコール、次亜塩素酸ナトリウム、熱水による消毒を行いましょう。
次亜塩素酸ナトリウムの濃度につきましては、塩素濃度約200〜1000ppm(0.02~0.1%)が有効とされています。
なお、次亜塩素酸ナトリウムは、酸性の洗浄・漂⽩剤、シアヌール酸系の製品と混合すると塩素ガスが発⽣して危険ですので、注意してご使⽤ください。
⇒「次亜塩素酸ナトリウム製剤の特徴と注意点」について詳細はこちら
FAQ
大腸菌はすべて有害ですか?
大腸菌の中には、無害なものもありますが、なかには人に下痢や腹痛を起こすものもあります。
このような胃腸炎を起こす大腸菌を「病原大腸菌(または下痢原性大腸菌)」と呼んでいます。
病原大腸菌は5種類に分類され、その一つが「腸管出血性大腸菌」です。
普段の生活で予防は可能ですか?
腸管出血性大腸菌は加熱や消毒薬により死滅しますので、通常の食中毒対策を確実に実施することで十分に予防可能です。食べ物を単に温めるだけでは菌は死滅しません。食肉は75℃で1分間以上加熱し、かつ中心部までしっかり火を通すようにしましょう。
(参考)家庭でできる食中毒予防の6つのポイント(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/01_00006.html
外食時に注意することはありますか?
発症すると症状が重くなりやすい乳幼児や高齢者の場合には特に、加熱が十分でない食肉などを食べさせないようにした方が安全です。また、焼肉やバーベキューを楽しむ際には、肉を十分加熱し、生焼けのまま食べないようにしましょう。生の肉をつかむ箸と焼けた肉をつかむ箸は別のものにしましょう。
関連情報(下記サイトを参考・編集し作成)
- 国立感染症研究所 感染症情報センター 腸管出血性大腸菌感染症とは
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/439-ehec-intro.html
- 厚生労働省 腸管出血性大腸菌O157等による食中毒
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/daichoukin.html
- 厚生労働省 腸管出血性大腸菌Q&A
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177609.html
作成日:2024年12月