「アデノウイルス」
ってどんな感染症?
「アデノウイルス」ってどんな感染症?
- 症状 ▶︎症状 ▼
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- 鼻水•鼻づまり
- せき
- 発熱
- 目の充血
- 嘔吐
- 下痢・腹痛
アデノウイルスとは、呼吸器、目、腸、泌尿器などに感染症を起こす原因ウイルスです。1953年に発見されました。51の型に分類され、病気と関係が深いのは1~8型です。多くの型があるため、免疫がつきにくく、何回もかかることがあります。
- 呼吸器感染症
- アデノウイルスは、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎などの気道炎を起こします。症状には個人差があります。主にせき、結膜炎のほか、喉頭炎やクループ(声帯やのどに感染して気道の粘膜がはれる病気)、気管支炎、肺炎などが起きる場合もあります。肺炎の原因になるのは3・7・21型。特に7型による肺炎は重症化しやすく、死に至るケースもあります。
- 咽頭結膜熱(プール熱)
- 特に夏の時期に、子どもを中心に流行することが多い咽頭結膜熱は、プール熱とも呼ばれていましたが、タオルの共有が減った事などによりプールでの集団感染は報告されなくなってきました。しかし、くしゃみや咳などの飛沫によって感染する飛沫感染や手指を介した接触感染で感染するので、保育園などで流行することがあります。熱は1日の間に39~40度の高熱と、37度前後の微熱の間を4~5日ほど行き来します。扁桃腺のはれ、のどの痛みに加え、結膜炎が伴うことも。学校保健安全法上の学校感染症の一つであり、主要な症状がなくなった後、2日間登校禁止となります。
- 流行性角結膜炎(はやり目)
- 年齢を問わず起こる目の病気で、充血し、目やにも出ます。咽頭結膜熱のような高熱は出ません。のどの赤みも強くありません。しかし非常に強い伝染力があります。流行性角結膜炎は学校保健安全法上の学校感染症の一つで、伝染の恐れがなくなるまで登校禁止となります。
- 胃腸炎
- 乳幼児期に多いのが特徴です。下痢、嘔吐、嘔気、気分不快、微熱、腹痛といった、ロタウイルスによる胃腸炎と似た症状が見られます。潜伏期は3~10日。感染者の便の中にあるウイルスが口から入って感染するほか、飛び散ったウイルスを吸い込むことでも感染する可能性があります。感染していても症状がない場合、気づかないうちに他人にうつしてしまうことがあります。
- 出⾎性膀胱炎
- 排尿時に痛みがあり、真っ赤な血尿が出ます。尿意が何度も起こる尿意頻発が見られることも。症状は2~3日で良くなり、血尿は10日程度で改善します。
- 感染経路
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くしゃみやせきによって、ウイルスを含んだしぶきが飛び散り、それが眼に入ったり、吸い込んだりして感染します。
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アデノウイルスの予防・対策のポイント
感染しない/拡げないために
基本は手洗い
流水と石けんを使った十分な手洗いが対策の中心です。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
プールに入る時の注意
咽頭結膜熱(プール熱)や流行性角結膜炎は,涙や目ヤニに触れた手や指、タオルなどから感染します。タオルの共有は避けましょう。またプールの塩素消毒が不十分な場合、プールの水が目や鼻、口に入り、感染します。
それぞれのタイミングで、感染対策を行いましょう。
・プールに入る前:シャワーで汗や汚れを落としましょう。
・プールの中:ゴーグルをつけて、目からの感染を防ぎましょう。
・プールに入った後:うがい、手洗い、目の周りの洗浄、シャワーをしっかり行いましょう。
せきエチケット
せきやくしゃみによる飛沫感染を防ぐため、感染者はマスクをしましょう。
マスクをしていないときに、せきやくしゃみが出そうになったら、ティッシュや腕で口と鼻を覆い、しぶきを周囲に飛ばさないように心がけて。
使用したティッシュはゴミ箱に捨ててください。
もし手のひらで口や鼻を覆った場合は、すぐに手を洗いましょう。
⇒「マスクの使用方法」について詳細はこちら
感染者のケアをする場合
自宅や施設で感染者のケアをする時は、感染を広げないように注意しましょう。標準予防策※に加え、飛沫感染・接触感染のための対策が必要です。
※標準予防策:感染の有無に関わらず、感染源となりうるものに対して感染の可能性があると想定して対応する方法。
手洗いは感染予防の基本
流水と石けんで十分に手を洗い、タオルの共用はひかえます。
⇒「手洗いの方法」について詳細はこちら
タオルの使い分けと洗濯
タオルの共有は避けましょう。アデノウイルスは熱に弱いので、感染者が使ったタオルは、熱水で洗濯すれば消毒できます(目安は85℃で1分間以上)。熱水洗濯が難しい場合は、水洗いした後に次亜塩素酸ナトリウムを使って消毒する方法も有効です。
次亜塩素酸ナトリウムは漂白作用があるので、色物・柄物を消毒する際にはご注意ください。
ケア時はマスク・ビニルエプロン(ガウン)・手袋の着用
ケアをする時は、飛沫やしぶきを吸い込んだり、衣服が汚れないようにするために
マスク・エプロン・手袋を着用し、細菌・ウイルスに直接触れないようにしましょう。
次のものは感染源となる可能性があります。
① 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
② 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
③ 使用した器具・器材(注射針・ガーゼ等)
これらに触れる可能性がある時は、必ず手袋を着用しましょう。同じ人のケアでも、排泄物や創傷皮膚に触れた後は手袋を交換してください。
手袋やエプロンを脱いだ後は、手指消毒が必要です。
⇒マスク・エプロン・手袋、着脱のタイミングと使用方法のチェックシートはこちら
学校・幼稚園・保育園では?
咽頭結膜熱(プール熱)は主要な症状がなくなった後2日間登校禁止。
流行性角結膜炎は伝染の恐れがなくなるまで登校禁止。
⇒その他注意すべき感染症はこちら
アデノウイルスに効果的な消毒
アデノウイルスは「ノンエンベロープウイルス」のため、次亜塩素酸ナトリウムが有効です。
消毒薬使用時には、適用する素材や効果を確認しましょう。
次亜塩素酸ナトリウムの濃度につきましては、塩素濃度約200〜1000ppm(0.02%から0.1%)が有効とされています。
なお、次亜塩素酸ナトリウムは、酸性の洗浄・漂⽩剤、シアヌール酸系の製品と混合すると塩素ガスが発⽣して危険ですので、注意してご使⽤ください。
⇒「次亜塩素酸ナトリウム製剤の特徴と注意点」について詳細はこちら
FAQ
アデノウイルスの流行時期はいつですか?
アデノウイルスは多くの型があり、季節を問わず流行する可能性はあります。
夏風邪と言われる咽頭結膜熱(プール熱)や流行性角結膜炎(はやり目)は、夏場に地域全体で流行する傾向があります。
感染対策カレンダーはこちら
アデノウイルスは大人でも感染しますか?
咽頭結膜熱(プール熱)や胃腸炎など、小児の感染が多いですが、大人にも感染します。アデノウイルスは、感染力が非常に強いノンエンベロープウイルスです。アルコール消毒が効きづらいため、塩素系消毒薬や熱水による消毒を行いましょう。
身の回りの清掃・消毒 からだの消毒はこちら
アデノウイルスに感染すると、目の充血や目ヤニが出ますか?
咽頭結膜熱(プール熱)や流行性角結膜炎(はやり目)に感染すると、目の症状が出ます。しかし、アデノウイルスの型は多く、目の症状が出ず、発熱や下痢など他の症状が現れる場合もあります。アデノウイルス7型による肺炎は重症化しやすいため、気になる症状が現れた場合は、医療機関を受診しましょう。
それぞれの症状が出る理由は「感染症×からだのなぜ?」を確認しましょう。
関連情報(下記サイトを参考・編集し作成)
- 1)国⽴感染症研究所 感染症疫学センター
http://www.nih.go.jp/niid/ja/from-idsc.html - 2)野⽥雅博 他:感染症学雑誌74(8),664 - 669,2000
- 3)野⽥伸司 他:感染症学雑誌55(5),355-365,1981
- 4)社内資料:ウエルセプト®のin vitroウイルス不活化試験
- 5)社内資料:ウエルセプト®⾼頻度接触⾯消毒⽤のウイルスに対するin vitro不活化試験
作成日:2023年12月