地域連携企画/座談会vol.1 なぜつながるのか、なぜ継続した活動が必要なのか私たちが「地域連携」に取り組む理由

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各施設が連携し、地域全体で感染対策を進める「地域連携」。リーダーとして活動に取り組む感染管理認定看護師や感染症看護専門看護師は、どのような目的・課題を抱え日々活動を続けているのでしょう。感染対策コンシェルジュでは、2023年11月某日、各地域・組織で活躍する感染管理認定看護師や感染症看護専門看護師の皆さまにお集まりいただき、地域連携の意義や目的、地域に感染対策を根付かせるために取組んでいることについて意見交換をしていただきました。その模様を全2回にわたりお伝えします。

※マスクの着用・換気を行い、座談会を実施しました。
写真撮影時のみマスクをはずしています。

座談会参加メンバー(順不同、以下敬称略 ※プロフィール詳細はこちら

  • 残間 由美子氏
    NPO法人 みやぎ感染予防教育推進
    ネットワークきれいな手
    理事長
    感染管理認定看護師
  • 目崎 恵氏
    新潟大学地域医療教育センター
    魚沼基幹病院
    感染管理部 看護師長
    感染管理認定看護師
  • 井原 正人氏
    川崎市立川崎病院 感染対策室
    KAWASAKI地域感染制御協議会
    看護師部会代表幹事
    感染管理認定看護師
  • 和田 孝子氏
    富士見高原医療福祉センター
    富士見高原病院
    感染症看護専門看護師
  • 丸山 沙緒里氏
    栃木医療センター
    副看護師長
    感染管理特定認定看護師
注)文中の略語について
ICN(infection control nurse):感染管理看護師
CNIC(Certified Nurse in Infection Control:CNIC):感染管理認定看護師

各地域で取り組む地域連携、それぞれの活動と実施する目的とは

地域連携のために、どのような取り組みを実施していますか。

私は市立川崎病院(神奈川県)に勤務しています。川崎市では市内の感染制御の底上げと顔の見える関係を構築することを目的に、2011年にKAWASAKI地域感染制御協議会を発足しました。現在7つの基幹病院を含む35施設と行政担当者(保健所)を含む会として活動しており、年2回の定例会と2か月毎に幹事会を開催。そのほかCNICで構成された看護師部会が、地域の高齢者施設へ行政担当者とともに出向いて施設ラウンドや研修会を行っています。

私は魚沼基幹病院(新潟県)に勤務しており、2016年から保健所と協働し、地域施設における「感染予防対策リーダー養成研修」を立ちあげました。感染対策を軸となって行えるリーダー的人材を施設ごとに育成することが目的です。また、魚沼圏域内での医療機関全体の感染対策の質向上を目指す取り組みとして、10施設の医療機関の病院看護師を対象にリンクナースの研修・育成を行っています。

坂総合病院(宮城県)の感染制御室室長を務めていた2005年に感染管理担当看護師のネットワークである宮城ICNネットワークを立ち上げました。また、コロナ禍で厚労省クラスター班に所属し感染対策に取り組んできたほかに、2021年には「NPO法人みやぎ予防教育推進ネットワーク きれいな手」を立ち上げました。県内や仙台市内において感染予防教育、講習会・ワークショップの企画運営、感染対策に関するコンサルタント活動などを行っています。

現在JA長野厚生連 富士見高原医療福祉センターに所属しています。センターには5事業所があり、そのうち老健5、特養3、グループホーム2、小規模多機能1、通所単独2、訪問介護ST4、診療所5、訪問看護ST3(うちサテライトが1)の感染対策を担当し、適宜本院の感染対策チームと協働しています。そしてコロナ禍以前は所属以外の地域活動も業務の半分近くを占めていました。コロナ禍で中断しているものもありますが、介護施設に呼ばれて勉強会の講師を担当したり、県内の介護施設の職員向けに自主開催の勉強会などを行ってきました。

私は栃木医療センターに勤務しており、感染対策向上加算1施設、保健所、医師会などに薬剤耐性菌対策の重要性を理解してもらうため、各施設と連携して合同カンファレンスと訓練、連携強化加算報告書を使用できるように体制作りを行っています。

不平等さのない医療を目指し、対策水準を上げることで地域を守る

地域連携におけるCNICの活動範囲は非常に幅広く、さまざまな連携の形がありそうですね。
「なぜ、地域連携が必要なのか」についてご意見をいただけますか。

感染対策が必要だからやっている。これに尽きると思います。

そうですね。感染対策は、さまざまな職種や施設による協働によって達成されるもの。その中で私たちCNICは感染対策の専門家として、集団感染をなくすことや地域医療を守ることが大きな目標であり、正しい感染対策を伝えるという大事な役割があると思います。

地域連携の目的はいくつかありますが、1つは効率がいいということ。感染対策マニュアルも1つあれば地域内で共有することができますよね。もう一つは地域で耐性菌が増えているときやクラスターが発生したときに、普段から連携して地域の感染対策の水準を上げておくと、自分の施設のためにもなるということです。みんなで取り組むことで効果がさらに上がっていくということが一番の目的だと思います。

医療機関それぞれが対策をしておかないと、地域住民にとって医療が平等なものではなくなってしまいますよね。この病院だったから感染した、この病院だから感染しなかったという状況にはしたくない。どの病院であっても偏りのない感染対策が受けられるような医療を目指したいと思っているので、地域連携は欠かせません。各施設が施設の状況に合わせながら必要な感染対策が実施できるようにしていかなければ、地域を守れないと感じています。

マンパワーも含めて施設ごとで対応するには限界があるので、我々専門知識を持つものが地域で支える必要があるということだと思います。私が勤務する市立病院には、地域内の施設からさまざまな感染症で患者さんが入院してこられます。そこで施設に介入してみると、一生懸命感染対策をしているけれど集団感染が起きてしまう。「相談する先がなくて困っている」という声が非常に多いんですね。そうしたニーズに応えようと活動を始めました。ただし、熱意のある人が1人だけいても感染対策は難しい。仲間を増やしていくことは本当に重要だと思います。

地域でどのように活動を始めていいかわからないという方もいらっしゃると思います。
活動を始める・広げるきっかけについてもお聞かせいただけますか。

私の場合は、2022年の診療報酬改定がきっかけになりました。県には栃木地域感染制御コンソーティアム(通称:TRICK/トリック)という団体があり、医師、看護師、薬剤師、検査技師といった4職種が入って研修会などを行っています。そこで、感染対策の基本的な技術を知らない方が医療従事者の中にもいるという現実を目の当たりにしました。そんなときに診療報酬の改定があり、外来感染対策向上加算は地方の医師会または感染対策向上加算1施設との連携が必須となったので、この機会を逃すまいと活動を始めたのです。診療所や外来診療の医師の先生方、職員の方に、具体的な手指衛生のタイミングやPPEを直接指導しています。中には在宅医療を行っているクリニックもあるので、そこから高齢者施設への介入など活動機会が広がるのではと期待しているところです。

私は中規模病院の専従のICNとして5年間活動する中で、徐々に施設からの相談が増えていきました。病院には私の代わりはたくさんいるけれど、診療所や高齢者介護施設には私の代わりになる人はいないと感じたことで、一度病院を辞めてフリーランスになったのです。当時地域連携は頭になく、勉強会を自主開催して、感染対策の水準を上げていくという考えでした。その後、今の職場の看護部長が「病院の感染対策を担当しながら、地域活動も続けてみないか」と声をかけてくださいました。両方の活動を行いつつ地域のリソースの1つとして私を活用していただくというのが、感染症看護専門看護師としての役割ではないかと意識が変わってきたところです。所属施設で行っている対策を地域の施設にも伝え、地域活動で行っている勉強会で得られた答えを、所属施設でマニュアルに生かして試してみるとか、それぞれの連鎖によってできることの幅が広がっている実感があります。

目崎さんの取り組みである「感染予防対策リーダー養成研修」は
どのようにして始まったのでしょうか。

CNICを取得後、県内ネットワークからの派遣で、施設の研修会講師として出向く機会が増えていきました。研修をしてその場では「よしやったぞ!」と達成感を感じても、しばらくするとインフルエンザのアウトブレイクが起きたりするんですね。研修をしても改善しなければ意味がない、どうしたらいいかと考え始めたんです。ICT(感染対策チーム)と現場をつなぐリンクナースがいるけれど、施設にはいません。そこで保健所の担当者と相談して、施設ごとに感染対策を推進できるリーダーを作ろうということになりました。保健所としても感染症の集団発生を抑えたいという想いは同じでしたから話はまとまりやすかったですね。実績としては2016年~2019年の4年間で53施設83名の感染予防対策リーダーを輩出しました。2020年~2022年はコロナ禍ということもありフォローアップ研修のみでしたが、2023年度より取り組みを再開しています。たとえクラスターが発生したとしても、リーダーがいる施設では感染対策においての話が伝えやすく、対応がスムーズに行えていたように思います。このような取り組みをしていてよかったと感じています。

行政からの業務をまとめて請け負うNPOを設立

様々な立場を経験されている残間さんは、いかがでしょうか。

私は2004年にCNICの資格を取ったのですが、当時はまだ手袋をはめずにオムツ交換が行われていた時代でした。手袋をつけてオムツ交換をすると「汚いと思っているのか!差別するのか」と怒鳴られるような時代です。その後、CNIC資格ができ、社会に必要な存在だと認識されていったことは大きな一歩だったと思います。県内の感染管理担当の看護師の集まりである宮城ICNネットワークを立ち上げた後は、施設で起きている問題を解決しようと感染管理ベストプラクティス研究会を立ち上げました。〝ベスプラ〟は病院で行われていたノウハウを介護分野に応用し均一に感染対策をできるようにしたものですが、関西と東北から始まって今は全国に広がっています。これが看護師にしかできない領域だったということも非常に大きいと思います。こうした活動が認められ現在の「きれいな手」設立へとつながっていきました。

NPO法人 きれいな手の設立で活動に変化はありましたか。

NPOを立ち上げた理由としては、コロナをきっかけに市や県から予算をもらえるようになったという点が大きいです。今では市や県の保健福祉部の感染対策業務の多くはきれいな手へ直接依頼がくるようになり、クラスター対応や各施設を回る現場対応に人を派遣することも可能になりました。宮城ICNネットワークは自前のボランティア活動、ベストプラクティスの活動は企業協賛で運営していましたから、行政からの予算があって活動できるというのは大きな違いです。ただこの方法がベストかどうかはわかりません。どういうネットワークづくりが本当に役に立つのか、それは皆さんにも聞きたいことですね。県や市で「感染対策のことを誰に聞けばいい?」というときに、私は真っ先に名前が挙がる人になりました。でもこのような活動をする人は私1人ではなく、たくさんいないとダメだと思うのです。活動を継続するにはお金もかかりますし。目崎さんが力を入れているリーダー養成講座やリンクナースを増やす活動も大切なネットワークづくりだと思います。

地域で役立つ・機能するネットワークづくりとは?

リーダーをどうやって増やしていくか、
そして活動する費用、時間を確保する面でも課題があるということですね。

自分の所属は病院であって、本来の勤務外の活動を認めてもらうにはやはり時間がかかりましたね。私は地域の施設からの相談を電話やメールで受けているのですが、同じ相談でもやはり現場の環境というのは個々に違うので、現場を見ないと適切なアドバイスはできないんですね。例えば手袋着用が必要というと、勤務時間が始まると同時に全職員が手袋をしてしまう。そう指導したつもりはなかったのに…ということもありました。電話やメールでできることと、現場へ出向く必要がある場合とがあって、時間をどう捻出するかは悩みどころです。もう1つ、地域連携は保健所の活躍でもだいぶ変わると思うんです。ただ保健師さんはそもそも数が少ないため、獣医師さんや検査技師さんが担当されることもあり専門領域も様々です。現実的には、保健所の方に地域の相談窓口となっていただいて、その情報がKAWASAKI地域感染制御協議会に届く。私が統括でまとめて、相談があった地域の医療機関のCNICに出向いていただいたり、施設に同行してもらったりしています。それは施設につなぐという目的もありますが、保健所の方にも我々が持つ知識を知っていただきたいという思いがあります。病院を一歩出ることで気づくこともありますから、地域の中でさまざまな職種が関わりあい、顔が見える関係になっていくことは重要だと感じています。

井原さんのおっしゃるように地域にあるニーズをすくい上げて支援していく、その体制づくりにおいてCNICは中心的存在であり調整役としても必要な存在です。
施設側にとっては、行政や地域の中核病院に相談先があるということが支えになりますが、
ネットワークをうまく機能させるために皆さんが意識していることはありますか。

私は施設の勉強会に使用するスライドは同じものを使用しますが、その際、看護師長さんや、感染対策係、また教育委員などに希望する内容を確認し、少しだけ当該施設向けにカスタマイズするようにしています。当該施設の管理者が「職員に伝えたいこと」を、ICNを通して伝えることで、職員が「聞いてくれる」ことがあると看護師長よりときどき言われるためですが、そうしたニーズもあると思います。

外来感染対策向上加算の点数だけが取得できればいいという施設も正直あると思うんですが、感染対策を実践してもらうために、直接訪問をして必要性を伝えることを大切にしています。相手側と信頼関係を築き、日頃からこまめに連絡を取ったり、自分だけで物事を決めずに参加メンバーに相談をすること、共通理解できるように何度も伝わるまで説明を行うことなどを意識していますね。

我々は保健所の行政指導という立場ではないので指摘や指導ではないと考えています。それぞれの環境を見て(ラウンド)、あくまでも支援する立場で関わることを大切にしています。

信頼され、頼りになる人を目指すこと。専門的な知識とそれを正しく伝える技術、感染管理担当者が疑問を持った点について、どこの理解が不足しているのか見極める能力を鍛えることは重要ですね。

私も顔の見える関係づくりを大事にしています。理想の対策をただ提示するのではなく、それぞれの施設の状況や背景を理解して、今ある資源や現状の中でどのようにしたらより良い対策ができるかを皆で検討することや、ディスカッションを用いて各施設の問題や取り組みを共有するということも大事にしています。各施設のリーダーたちが孤立しないよう支援していくことも重要です。感染管理担当者のみならず、管理者間の連携も重要で、目的を共有していくことが、地域での感染対策の底上げにつながります。

ありがとうございます。
継続的に活動するためにも、『各機関との信頼関係づくりや共通意識を持てるようなコミュニケーションを心がけること』『関わる職種や人を増やしていく』という課題も見えました。
例えば目崎さんが新潟県で取り組むリーダー的人材の育成やリンクナースの育成は活動継続のヒントにもなりそうです。
第2回は、各施設の自立支援のために実施している活動内容とその具体的な成果、これからの活動についてさらに詳しく皆さまに語っていただきます。

座談会vol.2はこちら>

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