病院だけでは終われない
感染対策を
地域の連携で支える

大阪大学医学部附属病院
感染制御部 副部長・看護師長/感染管理認定看護師
太田 悦子
  1. TOP > 
  2. 感染対策Voice > 
  3. 病院だけでは終われない感染対策を地域の連携で支える

大阪府吹田市では2010年度に全国に先駆けて「院内感染対策連絡会議」を設置しました。吹田市保健所(※)管内の複数の病院や高齢者施設が連携し、地域全体で感染対策を進めるのがねらいです。

地域連携を呼びかけたのは大阪大学医学附属病院感染制御部。副部長を務める太田悦子氏に「院内感染対策連絡会議」の設立経緯と具体的な活動についてお聞きしました。

※取材当時期は吹田保健所。2020年4月1日に大阪府吹田市が中核都市に移行に伴い、吹田市保健所へ。

吹田保健所をハブとする
地域の感染対策を担うネットワーク

地域全体の包括的な感染対策を推進するために、行政・保健所・医療機関や高齢者施設との連携を実施。各施設の感染対策の実施状況などの情報交換やサポート、教育をおこなっています。

吹田保健所を中心に各施設と連携
  • 【管内15病院】
  • 【吹田市役所
    (福祉課)】
  • 【高齢者施設】
  • 【大阪府
    公衆衛生研究所】

安心して利用できる。
地域医療を支える組織づくり

感染管理に関心を持つようになったきっかけは
何ですか?
病棟看護師として造血幹細胞移植を受ける患者さんの看護に携わったことです。もし私が手指衛生を少しでも怠ったら、患者さんが感染症を起こし、最悪の場合、生命にかかわるかもしれない。そのような発生しうる事例を考えていく中で、感染管理を徹底することの大切さに気付き始めました。
その後、先輩看護師の後押しもあって感染管理認定看護師(ICN)の資格を取り、現在は感染制御部に所属しています。
感染制御部とはどのような部署ですか?
感染制御部は、病院全体の感染管理を担当しており、「抗菌薬適正使用支援チーム」と「感染制御チーム」の2つのチーム活動をしています。
抗菌薬適正使用支援チームは、抗菌薬を正しく用いるための指針の作成や、各診療科で感染症にかかっている患者さんの治療を感染対策の専門家として支援しています。感染制御チームは、院内感染発生有無の確認や、感染対策に関する教育・支援・広報を職員・患者・ご来院の方へ行っています。
感染制御部の
活動 1
『感染対策』の重要性を伝える

2018年に「手指衛生“真実の口”キャンペーン」を実施しました。
“仕掛学”の第一人者である大阪大学大学院経済学研究科の松村真弘教授とのコラボレーションで、手を入れるとアルコール手指衛生剤が自動的に出てくる仕掛けを病院内ロビーに設置。
「つい手を入れてみたくなる」と多くの方々に関心を持っていただけました。「ついしたくなる」という遊び心と連動して感染対策が実施できる取組みとなりました。

感染制御部の活動 2『手指衛生』の重要性を広める

感染制御部と大阪大学クリエイティブユニットの共同制作で、医療機関における手指衛生や感染対策の重要性を啓発するために動画を作成し、YouTubeチャンネルに掲載しています。日々の活動や正しい手洗いのポイント、ベッドサイドで手を洗うタイミングについて、ドキュメンタリータッチで、分かりやすく解説しているので、医療従事者のみならず一般の方にも是非ご覧いただきたい動画です。

阪大病院が「院内感染対策連絡会議」を
構想した経緯について教えてください。
国内では様々な地域で、高齢者が住み慣れた場所で最期まで暮らせるように、地域包括ケアシステムの構築を進めています。阪大病院を退院後、別の病院や施設に移っていく患者さんも大勢おられます。しかし、移った先の病院や医療・介護を提供する施設に、感染対策の専門家がいるとは限りません。そこで、吹田保健所に提案して、専門家からの感染対策サポートや講座の実施、相談窓口を行う「院内感染対策連絡会議」を立ち上げました。(2010年度)

地域全体の感染対策の水準向上を
目指す

「院内感染対策連絡会議」は、
どのような活動をしていますか?
感染防止対策部門を設置し、診療報酬上の「感染防止対策加算Ⅰ(※)」を取得している7カ所の病院間で、有効な感染対策ができているか、お互いにチェックできる組織を運営しています。また、各病院でICNの資格を持つ担当者が、管内の特別養護老人ホームなどの高齢者施設への訪問指導(ラウンド)を行っています。感染防止技術や予防への講習・アドバイスを実施しており、これまでにのべ20施設以上を訪問しました。
実際にラウンドすることで、「洗面用のコップを水回りに置いたままにしない」、「エアコンのフィルターを定期的に清掃する」など、施設の実情に即した具体的なアドバイスができます。問題点を指摘するだけではなく、なぜ対策を行う必要があるのか、科学的な根拠も併せてお伝えすることで、感染対策の重要性への理解を深める効果もあると思います。最近はさらに一歩進めて、各施設で感染対策の中心となるリーダーを養成するための研修も始めました。

※ 感染防止対策加算:病院全体で組織的に感染対策を実施していることを条件に、診療報酬が加算される制度で、1と2の2種類ある。算定には一定の施設要件がある。

活動により変化はありましたか?
「院内感染対策連絡会議」の活動を通じて、吹田保健所管内の病院・施設で感染管理に携わっている方から相談される機会が増えてきました。これからも、地域全体の感染対策の水準が向上するよう、病院、保健所、高齢者施設と一緒に活動に取り組んでいきたいと思っています。

(取材時期:2019年11月)

ページトップへ戻る