患者への
「思いやり」から
生まれる感染対策

大阪府済生会千里病院 
感染管理室副室長 
感染管理認定看護師
橋本 渚
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感染管理認定看護師(ICN)とは、感染症の予防や管理に関する知識・技術を有しているとして日本看護協会の認定を取得している看護師で、いわば感染管理のスペシャリストです。全国で2903人(2019年7月時点) が認定されています。

ICNとして「院内感染対策連絡会議」の活動に携わる橋本渚氏にお話を伺いました。

全員が徹底した標準予防策を

ICNとして病院ではどのような仕事をされていますか?
病院の感染管理室で、院内の感染管理・感染対策を担当しています。感染管理室の同僚や各部署のリンクナースとともに、効果的かつ実行可能な感染対策の推進を通じて、院内感染や薬剤耐性菌の発生を防いでいます。標準予防策(スタンダードプリコーション)を徹底することが重要で、その中でも手指衛生は基本中の基本といえます。

標準予防策
(スタンダードプリコーション)とは?

医療やケアが行われる場において、全員が実施する感染対策のこと。
手指衛生(手洗い、手指消毒)、個人防護具(手袋、マスク、ガウンなど)の使用、呼吸器衛生(咳エチケット)、環境の整備、器具・機器・針などの取り扱い、注射手技などが含まれます。

手指衛生を徹底するため、具体的にどんなことをしていますか?
患者さんやご家族には、外来・病棟ともに、入口など目につきやすい場所にアルコール手指消毒剤を置いたり、手洗いの大切さを訴えるポスターを掲示したりして啓発に努めています。1月の手指衛生週間には、予約入院の患者さんを対象に手指衛生の重要性を説明し、洗い残した部分が光る蛍光塗料を用いた手洗いチェックを行いました。
職員向けには、各部署でアルコールの使用量をモニターしたり、リンクナースが職員の手を直接観察して確認したりしています。手指衛生の大切さについて繰り返し伝えており、私がICNとして着任した当時と比べ、現在のアルコール使用量は3倍に増えました。2019年度はこれまでやってきたことに加えて、医師を対象にパームスタンプ法を用いた手洗いチェックを行いました。これらの活動の結果、病院全体で耐性菌の発生を減らすことに成功しました。

パームスタンプ法とは?

寒天培地に手のひらを押し付け、手指の皮膚表面に付着した菌を培養し、コロニー数を計測する方法。手指消毒の前後で比較することにより、消毒ができていない個所の確認ができます。

高齢者施設を訪問して
感染対策を支援

高齢者施設へのラウンドはどのように行っているのですか?
吹田保健所管内で「感染防止対策加算Ⅰ」を取得している7施設のICNが、高齢者施設に出向いて感染管理の支援活動を行っています。私は2018年度に5施設に訪問しました。基本的には病棟ラウンドと同じで、感染管理の観点から気が付いた点を伝え、どうすれば改善できるか、対策を一緒に考えます。
実際に行ってみて分かったのは、高齢者施設はあくまで生活の場であって、病院とは環境が異なるという事です。また、対策に充てられる財源も限られています。入居者の中に認知症の方がいれば、うまく伝わらないこともあります。私たちが病院でおこなっている感染対策が当たり前にできるわけではないということを痛感しました。
高齢者施設には介護スタッフを中心に様々な職種の方が勤務されていますので、医療の専門用語を多用せず、わかりやすい言葉に言い換えること、単に「○○してください」ではなく「なぜ○○が望ましいのか」理由を一緒に伝えることを心がけています。現状でできる対策を一緒に考える姿勢も大切だと思います。そのためラウンドを実施した後に送る報告書も、「評価」ではなく「支援」につながるようにしています。

病院、高齢者施設、
そして地域全体へ

高齢者施設への支援を通じて感じたことは何ですか?
ICNがラウンドを行い、感染管理の考え方やノウハウを伝えることを通じて、高齢者施設に勤務する方々の知識・技能が高まり、リーダーが育ってきたと思います。高齢者施設の見学会では、私たちICNが気付かないような具体的なことも含めて活発な意見交換がおこなわれ、皆さんが楽しそうに参加されていたのが、とても印象的でした。
感染管理の理想的な未来像があれば教えてください。
私は、感染対策は「思いやり」だと思います。自分がしてもらってうれしいことを患者さんにもする、逆に、自分がされてイヤなことは患者さんにもしない、これを徹底すれば、標準予防策が網羅できると思っています。病院だけではなく、高齢者施設、さらには学校、在宅、企業など、社会全体で当たり前に感染対策が実施できるよう、ICNとして活動できたらと考えています。

(取材時期:2019年11月)

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