転院・退院時の 伝播 でんぱ を断つ!
点と点を結んで広げていく、
感染対策の輪

医療法人 八女発心会 姫野病院
感染対策室 感染管理認定看護師
中西 穂波
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複数の病気をかかえる高齢者は、病院、介護施設、在宅を行き来します。
この“転院・退院時の感染伝播(でんぱ)をいかに断つか”に着目した感染対策活動を実施しているのが、福岡県八女郡の姫野病院。
同院では感染症を地域に広げないために、さまざまな対象をターゲットに実践的な感染防止トレーニングを実施しています。
高齢者の医療や介護に関わる専門家から一般市民まで、地域全体が共通認識のもとで感染対策に取り組めるように工夫している活動事例を紹介します。

介護施設職員のための
体験型研修会
現場で
実践しやすいテーマを企画

当院で2013年から地域の介護施設職員などを対象に毎月開催している体験型研修会(名称:地域交流勉強会)は、高齢者の転院や退院を円滑に進める目的でスタートしました。
当院の認定看護師と医療ソーシャルワーカーが協働企画し、毎月30~40名が参加。褥瘡(じょくそう)、口腔ケアといった高齢者に必要な医療ケアを、体験しながら学んでいただいています。
体験型にするメリットは、座学だけの研修よりも理解が深まること。
学んだことをそれぞれの持ち場でいかしていただけるように、対象に合わせてテーマを設定し、実践的な内容を企画するように心がけています。
例えば、介護施設職員を対象にした研修では、手指衛生、個人防護具の着脱、環境整備、吐物処理、アウトブレイク防止など。医療ソーシャルワーカーを対象にした研修では、転院・退院に際して情報共有すべき感染症などです。
参加者からの反応がよいため、今後も継続していく予定です。

参加者の声

地域交流勉強会(吐物処理演習)

  • 消毒薬の濃度調整の方法が
    理解できました。(介護職員)
  • 吐物がどれほど広範囲に

    散するのか、知ることが
    でき
    ました。(介護職員)
  • 現場でどう実践すればいいのか、
    具体的な対策や
    知識が身につきました。(医療ソーシャルワーカー)

現地へ行って一緒に考える
オーダーメイドの改善策

上記の合同研修会(地域交流勉強会)の参加者から希望で、各施設への個別出張もするようになりました。依頼を受けた施設を実際に確認し、今ある物品でできる感染対策を一緒に考えます。

現場におもむくことで初めて把握できる発見は少なくありません。
例えばある施設では、トイレの洗面台に共有のタオルがかけられている一方、利用者が排泄するたびにトイレの床に消毒スプレーを散布していました。
このように、不十分な対策と過剰な対策が混在する状況は、合同の研修会ではなかなか把握できないことでした。

現実的な改善につなげられるのが、個別の施設で行う勉強会のメリットです。

現地勉強会演習風景

施設の管理者にアプローチする意義

地域交流勉強会の回数を重ねるごとに、社会福祉協議会が主催する研修会にも呼ばれる機会が増えていきました。
福祉事業所などの管理者が多く参加なさっています。
管理と現場、双方の立場を熟知する方が多いため、自施設の問題点の把握から改善までがスムーズに実践されやすい利点があります。
施設管理者向けの研修会のテーマ設定は、アウトブレイク事例の紹介、現場で抱える問題点に関する質疑応答等などが中心です。

地域の医療機関との密な連携も

地域内の他の医療機関とは、日ごろから情報共有したり、気軽に相談したりできる関係を築いておく大切さを感じます。そうすることで、患者さんが転院する際に、より詳しい感染症情報を得られ、適切かつ迅速な感染対策実施につなげることができるからです。

当院では、感染防止対策地域連携加算1算定の3施設、さらに当院のある福岡県南部の筑後地区の医師や感染管理認定看護師27名で、「筑後地区感染管理ネットワーク(CICTAC)」を構築。研修会、講演会、活動報告会などを定期的に開催しています。

同加算2算定の3施設とは年4回、合同カンファレンスを実施。手指衛生の実施回数や抗菌薬の適正使用、検出菌などの情報を共有しています。医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師以外にも事務部門の責任者も参加し、活発なディスカッションが行われています。

有事の際の感染対策にも、こうした普段からの密な連携は欠かせません。

合同カンファレンス

市民向けの啓発も対象者目線で

域の感染予防には、市民のみなさんへの普及啓発も重要です。当院では、年代別に以下のような手洗い教室を開催しています。

一般市民対象の手洗い教室
年代別の特徴と実施ポイント

  • 高齢者
    • ・茶話会のような寄り合いの場を活用し、なごやかな雰囲気で行う。
    • ・手のしわ、硬皮、たこのある部位に洗い残しが多いので、
      試薬の蛍光塗料を使うと認識してもらいやすい。

    いきいきサロン

  • 小学生
    • ・テレビやインターネットから得た知識を持つ子が多い。
    • ・その知識を、実践につなげてもらえる伝え方が必要。

    わくわく病院のお仕事探検隊

  • 園児
    • ・紙芝居、体操など、遊びの延長で楽しく学んでもらう。
    • ・手を口に持っていく恐れがあるため蛍光塗料は使わない。
      代わりにバイ菌のスタンプを手に押してあげて、
      それを洗い流してもらうと反応がよい。

    ばいきんたいじ教室

見えてきた課題も

これらの活動を通して見えてきた主な課題を二つ挙げます。
⼀つめは、病院並みの感染対策を求めることができない⾃宅や介護施設に対し、どのように実践的な技術を提供するか。
二つめは、患者さんが介護施設を出られる際の感染症情報の伝達や対策のしくみをどう作るかです。

私たちの活動はまだ点と点の状態ですが、いずれは線で結ばれ、さらにその線が大きな輪につながるように、今後も地域に根ざした感染対策に取り組んでまいります。

※姫野病院ってどんな病院?

  • ・急性期から在宅医療支援までを担う、福岡県八女郡広川町の二次救急医療機関。
  • ・140床(一般病棟70床・地域包括ケア病棟70床)、13診療科(メインは整形外科、内科、小児科)。
  • ・介護老人保健施設、有料老人ホーム、介護・看護・リハビリサービス付き高齢者向け在宅、訪問看護ステーションがある。
  • ・理学療法士、作業療法士、介護士、言語聴覚士、歯科衛生士、管理栄養士、医療相談員の数が地域最多。
  • ・24時間体制で訪問診療、在宅での看取りも実施。
  • ・ケガなどによる高齢者の緊急受診を手伝う「ナースカー」を24時間稼働。

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