“いいとこ探し”で
新たな気づきが生まれる
得意を活かす
多職種チームラウンド

川崎医科大学附属病院
感染管理室 看護師長 感染管理認定看護師
平田 早苗
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当院敷地内及び近隣には複数の学園関連施設があり、病院職員約2,000名に加え、その他の学園教職員約1,500名、学生総数約6,000名と多くの関係者が病院を取り巻く環境にいます。その中で感染管理をしていると、たまに緊張が走ることもあるのです。

院内感染防止のために、開院1年半後の1975年6月に「院内感染防止委員会」が発足。その後、2度の名称変更を行い、現在の「院内感染対策委員会」となりました。
活動内容の一つ、他院にもお勧めしたい多職種ラウンド活動について紹介します。

多職種で構成される感染対策組織

当院の感染対策チームは、以下のように組織されています。多職種が ICT(院内感染対策チーム)やICS(感染対策担当者)として関わっています。

川崎医科大学病院 院内感染対策組織

  • 病院長
  • 院内感染対策委員会
    院内感染対策委員長 / 病院長 / 看護部長 / 事務部長 / 診療部門(医師) / 薬剤部 / 栄養部 / 中央検査部 / 施設部 / サプライセンター / 手術室 / 病院庶務 / 感染管理者(感染管理室専任医師) / 感染管理室(看護師・事務員) / その他病院長が認めた者
  • リンクドクター ▼
  • 感染管理室 ▼
  • AST ▼
  • ICT ▼
  • 感染対策担当者
    ICS
    感染管理室(医師、看護師、薬剤師、
    臨床検査技師、事務員) / 看護部(感染対策委員会師長他) / 医師 / 診療放射線技師 / 臨床工学技士 / リハビリ療法士 / ハウスキーパー
  • 看護部
    感染対策委員会
  • 看護部長
  • リンクナース▼
感染管理室
専任医師2名、専従看護師5名と専従事務職員1名の8名体制。
関係各組織の調整、職員教育、院内感染対策マニュアルの改訂等を実施。また、地域連携の取り組みとして、20施設と年4回合同連携カンファレンスを開催し、連携施設からの感染対策や感染症治療に関する相談は随時、受けつけています。
ICT(院内感染対策チーム)

前身は、医師(旧ICD)5名、看護師2名、薬剤師1名、臨床検査技師1名でスタートした組織。現在は、臨床工学技士、リハビリ担当、診療放射線技師、ハウスキーパー、事務職員も加わり、多職種編成となりました。
「感染対策担当者ICS」として多職種によるラウンド(ICSラウンド)を実施しています。

ICTコアメンバー:医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師の計7名で編成。
毎週、耐性菌の検出やその他の感染症の発生状況の確認と対策の実施等を、メンバーで分担して全病棟回っています(名称はICTラウンド)。

AST(抗菌薬適正支援チーム)
ICTコアメンバー、総合診療科、救急科、血液内科、心臓血管外科、呼吸器内科の医師で編成。
週2回AST会議を開催。部署からの相談事例、それぞれの職種が問題と思う事例を持ち寄り検討し、必要時に主治医や病棟に介入しています。
リンクドクター
各診療科に1名のリンクドクターを任命。
リンクドクター連絡会を2ヶ月に1度開催し、情報提供をしています。医師は一度に参集することが難しいため、同じ内容で少なくとも3回開催し、それでも参加できない場合は個別に開催することで参加率100%となっています。
看護部感染対策委員会
看護師の感染対策に関する教育計画やリンクナースへの指導を行うとともに、看護現場での問題を発見し、ICTへ情報提供、改善案の立案などを行っています。
リンクナース
各看護単位より1名選出。
看護部委員会と連携し、自部署での感染対策についてリーダーシップをとり、新人看護師を中心に感染対策に関する教育と実践評価を行います。

7種のチェックリストを使用し、フィードバックにもひと工夫

1病棟当たりに少し時間をかけ、2週間で全病棟を確認しています。不適切な状況を指摘するのではなく、「とにかく良いところを見つけてくるラウンドにしよう!」と“いいとこ探し”に出かけています。

チームを多職種編成するメリットに、それぞれの立場からの気づきも多く、新しいアイデアも出てくることや、参加メンバーが自部署での感染対策に力を注ぐようになる、といったことが挙げられます。
ほかの部署がどんな工夫をしているのかを知ることは、より良いアイデアを生み出す導きになります。私たちICSメンバーには、その導きを発見できる観察力とセンスが求められます。

一回のラウンドメンバーは看護師と他職種の3~4名です。7種類のチェックリストを使用し、毎週火曜日・水曜日に院内全体の1/4ずつラウンドします。

ラウンド後は、院内全体へのフィードバック用にICSラウンド報告書を作成します。
以前は、不適切な点と部署名を明記していましたが、「改善が必要な点」はラウンド時に各部署で指摘を行うため、報告書には部署名を記載しないことにしました。どの部署の事例かわからないため、それぞれが自部署の状況を再確認するいい機会となっています。一方、「良かった点」は部署名を記載。「良いところを伝えてもらうのはうれしい」と評判も良いです。

※クリックでPDFが開きます。
7種類のチェックリスト(ICSラウンドチェック項目)は、一定レベルを保つための重要なツール。これを用いて観察ポイントとその根拠を説明。

自ら成長し、感染対策を考え実践していく文化を育む

多職種がかかわるという当院の感染対策の文化は、しっかりと根付いてきたように思います。ただ、それが固執したものにならないように、今後は、いいとこ探し”で良いものをどんどん他の部署、部門に紹介することで自ら成長し、感染対策を考え実践できる文化にしていきたいと考えています。

※川崎医科大学附属病院って
どんな病院?

  • ・岡山県南西部の倉敷市郊外に位置する地域基幹病院。
  • ・1,182床の許可病床と34の診療科があり、高度救命救急センターがある。
  • ・特定機能病院として、感染防止対策加算1、感染防止対策地域連携加算、抗菌薬適正使用支援加算を算定している。
  • ・エイズ治療の中核拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、災害拠点病院(地域災害医療センター)の指定を受けている。
  • ・川崎医療福祉大学、川崎医療短期大学、川崎リハビリ学院など学園関連施設を有する。
  • ・病院職員約2,000名、その他の学園教職員約1,500名、学生総数約6,000名が在籍。

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