地域の感染対策の
レベルアップのために
保健所ができること

大阪府 吹田保健所
保健師
岩﨑 浩子
大阪府 吹田保健所
保健師 総括主査
西野 裕香
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「院内感染対策連絡会議」の事務局役を務めているのは吹田保健所の保健師さんたち。管内全体の保健医療を統括する立場から、病院や高齢者施設で感染管理に携わる人をネットワーク化し、“顔の見える“学びの場を提供しています。企画調整課保健師の岩﨑浩子氏と西野裕香氏に、行政の役割と活動についてお聞きしました。

地域の人をつなぐ保健所の役割

吹田保健所の企画調整課の業務について教えてください。

吹田保健所には企画調整課、地域保健課、衛生課の3つの課があります。企画調整課は保健師、栄養士、行政職の職員がおり、健康づくりをはじめ地域医療構想(※1)の推進や、健康危機管理(※2)の体制を整える業務を担当しています。健康危機管理を要する事態が起こった場合、保健所は関係機関との調整を行います。

※1地域医療構想 :団塊世代が75歳になる2025年時点の必要病床数を、4つの医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとに推計した上で、地域の医療関係者の協議を通じて病床の機能分化と連携を進め、効率的な医療提供体制を実現する取り組み。2014年に成立した「医療介護総合確保推進法」により制度化された。
※2健康危機管理 :「医薬品、食中毒、感染症、飲料水その他何らかの原因により生じる国民の生命、健康の安全を脅かす事態に対して行われる健康被害の発生予防、拡大防止、治療などに関する業務であって、厚生労働省の所管に属するものをいう」(厚生労働省健康危機管理基本指針)と定義されており、幅広い業務を行うことになっている。

「院内感染対策連絡会議」での吹田保健所の役割は何ですか?

地域の基幹病院である大阪大学医学部附属病院からご提案いただいたことをきっかけに、管内の全病院の賛同を得て、2010年に全国に先駆けて「院内感染対策連絡会議」を立ち上げました。ちなみに国の院内感染対策検討会議で地域医療機関等のネットワーク構築について提言されたのは2011 年です。
吹田保健所は、会議の設置要綱を整えるなど事務局機能を担っています。管内の医療機関が参加しやすい体制づくりに努めています。現在は年2回、管内の15病院のすべてが参加して会議を開催し、最新の知識の共有や各病院の現状報告などを行っています。管内は大阪大学医学部附属病院をはじめ「感染防止対策加算」を取得している病院が多いのが特徴で、身近な場所に感染管理のスペシャリストがいるのが強みです。

感染管理の認定看護師が高齢者施設を訪問指導

管内の病院と高齢者施設との連携について教えてください。

2015年の「院内感染対策連絡会議」で、感染管理認定看護師(CNIC:certified nurse in infection control)の方々から、地域貢献の一環として、高齢者施設に出かけて行って感染対策を支援したいとのご提案がありました。提案を受けて保健所は、高齢者施設の施設長の方とCNICとの顔合わせを兼ねて調整会議を開き、同年にCNICによる高齢者施設への訪問指導(ラウンド)を試行的に行いました。2016年からは本格的にCNICによるラウンドが実施されています。

第三者が高齢者施設に立ち入ることは、施設側の理解と協力がなければできません。保健所は大阪大学医学部附属病院のCNICと一緒に特別養護老人ホームの施設長の会議に参加し、事業の説明を行っています。また、高齢者施設側からCNICに対して「研修会の講師」や「施設ラウンド」の要請があった場合は、保健所が間に入ってCNICの派遣を調整します。

CNICのラウンドにより、どのような影響がありましたか?

CNICのラウンドを通じて、高齢者施設で入居者のケアに携わるスタッフが、感染管理の専門家であるCNICに相談しやすくなりました。さらに、保健所がCNICの連絡会を呼びかけ、CNIC主体の研修の企画につながりました。2018年度から、高齢者施設での感染対策のリーダーを養成するため、年3回の研修を行っています。
研修テーマは冬場の感染症対策で、講義に加えてグループディスカッションや手洗いの演習も行い、参加者からも大変好評でした。実施後に「講座で学んだことを自施設の職員研修に反映させた」「インフルエンザの施設内流行が見られなかった」などの声をいただきました。2019年度はさらに一歩進めて、お手本となるような感染対策を行っている施設ではどんな工夫、ノウハウがあるのかを学ぶため、高齢者施設の見学会を行いました。施設は違っても高齢者のケアに従事する職員同士、日ごろの苦労や悩みには共通することも多く、活発な意見交換が行われました。

日頃から“顔の見える関係づくり”を意識

保健所の立場から、感染対策で重要なことは何でしょうか?

病院では、診療報酬上の「感染防止対策加算」を取得するところも増えており、感染対策は充実してきています。一方、高齢者施設では、感染症に精通した人材がいない、感染予防に適した環境にない、感染対策に充てられる財源に限りがあるなど、感染対策に苦労されている姿が見受けられます。入退院を繰り返し、病院と高齢者施設を行き来する高齢者が増えていることを考えると、地域のネットワークをさらに充実させて、地域の人々がどんな場所にいても適切な感染対策を受けられるようにすることが重要です。
保健所は日頃から、関係者間のつなぎ役として、顔の見える関係づくりを意識して事業を行っています。「院内感染対策連絡会議」やそこから生まれた様々な活動にも手ごたえを感じています。2020年度からは吹田市が中核市となり、吹田保健所も吹田市保健所になりますが、この活動を継続していきたいですし、市の高齢者介護部門とも協力しながら、特別養護老人ホームだけでなく、高齢者施設全体に拡大していければよいと思います。

- Introduction -

大阪府 吹田保健所 企画調整課
西野 裕香(にしの ゆか)
岩﨑 浩子(いわさき ひろこ)

(取材時期:2019年11月)

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