集めた情報をどう活かす?
石川県の院内感染対策
6年間の試み
- 金沢医科大学 臨床感染症学講座 教授
- 飯沼 由嗣
毎年同じ時期に流行をくりかえすノロウイルス胃腸炎やインフルエンザ。
患者数が急増する流行初期は、少しの対策の遅れが院内感染につながりかねません。
しかし、過剰な対策は医療現場を混乱させます。それは患者さんの不利益にも直結します。
流行性感染症の対策を適切に実施するには、地域の流行状況をリアルタイムに情報共有することが大切です。
そこで石川県では、2013/14年シーズンから、「石川県感染対策サーベイランス・ネットワークIshikawa Infection Control Surveillance Network, IICSNet)」を開始し、リアルタイムに情報共有し、柔軟かつ的確に感染対策を実施するよう努めています。
「石川県感染対策サーベイランス・ネットワーク」の取り組み
金沢医科大学病院が中核となって、
感染管理認定看護師がいる石川県内の各施設の流行感染症情報を
収集・フィードバックをしています。
参加施設数は、同意を得られた13施設(2019年3月時点)です。
IICSNetが情報収集する流行性感染症
感染性胃腸炎 (主にノロウイルス) |
インフルエンザ | |
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流行 開始 |
11月上旬頃 | 12月末 |
ピーク | 11月下旬~12月 | 1月中旬~2月 |
監視 期間 |
11月中旬~翌年3月下旬 | |
集計 している 情報 |
「外来と入院のノロウイルス 陽性および疑似患者」の情報 |
「外来と入院のインフルエンザウイルス陽性および疑似患者」の情報 |
データ の 集約法 (各施設 →事務局) |
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フィード バック の方法 (事務局 →各施設) |
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初期が肝心! 流行段階に応じた対策
院内に感染が広がりやすい流行初期は、職員に情報をすみやかに伝えることが重要。
流行段階に応じた対策マニュアルの遵守と周知徹底、さらには、院内感染の特徴にあわせた次のような準備を、各施設に促しています。
感染性胃腸炎(主にノロウイルス)の場合
- ・感染性胃腸炎患者が入院したら、病棟に手指消毒剤を設置し、院内に感染が広がらないよう環境を整える。
- ・11~3月は、トイレの消毒に次亜塩素酸系消毒薬を使う。
※画像、横にスクロールします。
- <石川県での院内感染の特徴>
- 流行シーズンを通じて発生。市中の流行の程度にかかわらず、感染対策の破綻によって発生しやすい。
インフルエンザの場合
- ・インフルエンザ患者が入院したら、マニュアルに基づいて、飛沫・接触予防策や環境整備を徹底する。
- ・院内感染が広がった場合、患者の集団隔離、新規入院患者の受け入れ中止、患者の移動中止などを検討する。
- ・ワクチンを接種した職員でも、発症の予防策や院内への持ち込み防止策を行う。
※画像、横にスクロールします。
- <石川県での院内感染の特徴>
- 流行に応じて発生。そのためピークに合わせた感染対策を重要視している。
2016/17シーズン以後の発生は年間0~1回。
感染管理認定看護師への負担軽減が課題
悩み迷いながら一歩一歩
石川県感染対策サーベイランス・ネットワークが
6シーズンにわたって行ってきたこのような取り組みから、課題も見えてきました。
第一に、流行のピーク時になると、各施設の感染管理認定看護師に大きな負担がかかってしまうこと。これについては、多忙で報告が遅れた場合でも、後日データを送付していただくようにしています。
第二に、フィードバックした情報をどう活用するか。特にインフルエンザは、ノロウイルスと比べて院内感染が多いため、協力施設と検討を重ねているところです。
感染性胃腸炎(ノロウイルス)および
インフルエンザ院内伝播発生施設数(6シーズンの合計)
※金沢医科大学病院ってどんな病院?
- ・石川県中西部に位置する河北郡内灘町にある大学病院。
- ・特定機能病院として、
最新・最高の設備と各種システムを整備。 - ・40の診療科があり、
医師・看護師など職員約1850名が在籍。