高齢者の感染予防に
“フレイル対策”の視点を!
リハビリ専門職の力をいかした好事例
- 八雲総合病院
リハビリテーション室長 認定作業療法士 - 小岩 伸之
高齢者の多くは、「フレイル」という段階を経て要介護になるといわれています。
フレイルとは、心身の活力が低下した虚弱状態のこと。予防には、栄養、運動、社会参加の3つが重要です。
さらには「感染予防」も、フレイル予防には欠かせません。高齢者は感染症をきっかけに、寝たきりになってしまうことがあるからです。
そこで北海道・八雲総合病院(※)では、リハビリテーションの専門家が、フレイル対策や介護予防の視点を取り入れて、高齢者の感染予防活動をおこなっています。
高齢者が住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを続けていくために「免疫を高める生活の知恵」を院内外で伝えて健康づくりをサポート。その取り組みは、国が推進する地域包括ケアシステムの「要介護状態にならないための予防」とも重なります。
好評の活動を3つ紹介します。ポイントは、「運動や栄養の知識も一緒に啓発する」「高齢者同士で情報共有がなされる場をつくる」「自分の意思で取り組んでもらえる工夫をする」ことです。
住民が気軽に参加できる
「やくも元気塾」を開催
当院では、町民の介護予防を応援する「やくも元気塾」を月2回、開催しています。理学療法士による講話と運動で構成する45分のプログラム。外来利用者だけではなく、この教室に参加するためだけに来院する方もいらっしゃる人気講座です。
介護予防教室 やくも元気塾
手洗い・マスク着用のレクチャーも
取り入れた出前講座
当院のスタッフが自ら地域に出向き、町民のみなさんと積極的に交流する出前講座。2018年度は「元気に冬を乗り切ろう!感染予防と介護予防」をテーマに3か所で実施しました。免疫を高めるためるための知識、運動、手の洗い方、マスクの正しい使い方などを、楽しく、わかりやすく、お伝えしました。
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根崎町ふれあいサロン(八雲町熊石地区)
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種川元気クラブ(今金町種川地区)
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ゆうゆうサロン(今金町住民運営の通いの場)
からだの状態に合わせた助言で
手洗いを習慣化
要支援および要介護1~5の方が対象の訪問リハビリでは、それぞれのからだの状態に合わせたきめ細やかなアドバイスを心がけています。
- 脳卒中による片麻痺の方
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麻痺した側の手の洗い方
例)手指間が不衛生にならないように、
指を一本一本握るようにして洗うなどの
動作指導
- 車いすを使っている方
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洗面所に体を近づける工夫
例)洗面台の下の収納棚を撤去する、
フットレストが取り外しできる車いすを選ぶ等
- 円背 (背中の丸み)が強い方
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例)タオルをかける位置をできるだけ低くする
また、外来のリハビリ患者さんには、できるだけ直接声をかけて、手指衛生の協力を呼びかけています。その際に実践しているのが “適切なフィードバック”。当院が行った検証では、口頭で患者さんによいポイントをほめたり、改善すべきポイントを伝えたりすると、手洗いのやり方が上達する、感染対策の知識が高まる、入室時の手洗いが習慣化するなどの効果が一定以上あることがわかっています。そこで当院の職員は時間の許す限り、患者さんと直接コミュニケーションを取って手指衛生の指導を行うようにしています。このような取り組みを続けることが “強制しない手洗い習慣化”を根付かせていくと考えています。
※八雲総合病院ってどんな病院?
- ・北海道の南に位置する八雲町(人口16,723人)の町立病院。
- ・2次医療圏域(4町、人口35,616人)の基幹病院として
急性期医療から在宅医療までを担っている。 - ・回復期リハ病棟と療養病棟がある。
- ・理学療法士10名、作業療法士8名、言語聴覚士1名が在籍。
- ・八雲感染対策ネットワーク(YIC-Net)いついてはこちら