リーダーから広がる
感染対策
鍵は、
一人ひとりの意識向上

新潟県南魚沼地域振興局
健康福祉環境部(南魚沼保健所)
医薬予防課 保健師
山田 知佳
魚沼基幹病院
医療安全管理室看護係長
感染管理認定看護師
目崎 恵
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前編では、南魚沼地域で始まった「感染予防対策リーダー養成研修会」の活動内容について詳しく紹介しました。
これまでに南魚沼地区で33名、魚沼地区で28名のリーダーが誕生し、各施設で感染予防対策の活動を続けています(令和1年6月現在)。
取り組みの結果、地域への貢献や成果はどうだったのか。今後の展望についても、目崎氏と山田氏に聞きました。

ラウンド活動や情報交換を行い、養成リーダーの活動をサポート

感染予防対策リーダーを養成するという取り組みですが、どんな成果が上がっていますか?

感染症がどれくらい減ったのかという、数的な評価はまだ難しい段階だと思っていますが、リーダーが活動していく素地ができてきたという実感はあります。南魚沼地域には南魚沼地域施設感染症対策検討会という自主組織があり、社会福祉施設関係者などが集まり、情報交換や研修会などを行っています。今年度は、養成したリーダーが講師となって、新しく関わる職員に向けた研修会を行うなど、リーダーの活動範囲が広がってきています。各施設の感染対策についても、養成前よりも確実にレベルアップしていると感じています。

私は、県の集団感染発生報告を定期的にチェックしているのですが、施設内の発生件数(集団発生施設数)を見ると、南魚沼地区は数年前と比べると集団発生が少なくなってきている印象があって、少しずつですが、成果は出てきているのではないかと感じています。一つでも命が救えているかもしれないと思うとうれしいですね。励みになります。

研修後もリーダーの皆さんとの交流はあるのですか?活動の継続はできているのでしょうか。

先日、リーダーの皆さんと、研修会修了者の所属施設を訪ねるラウンド(巡回)をしました。自施設の取り組みを、実に生き生きと説明されていましたね。実際の取り組みが形になっていたり、さらに新しい問題点を見つけ課題に取り組んでいる姿を見たりと、皆さんの成長を目の当たりにするのは、非常にうれしい体験でした。見学後は、参加者が自施設の感染対策の充実に向けて意見交換をしたり、必要に応じて助言を行ったりしました。互いに、いい刺激になったようです。

今回、訪れた施設の一つは、古い民家をリノベーションした小規模多機能型居宅介護事業所でした。この古い木造の建物で、どうやって感染対策をするのだろうと、皆さん興味津々。介護を前提とした建物ではないため、感染対策のためのスペースや導線の確保が難しいのでは?と思ったのですが、実際には、玄関にきちんと手指衛生剤が置かれ、洗面所では歯ブラシがくっつかないように個別にきちんと整理されていました。感染対策がスムーズにできるように様々な工夫がされており、細やかな気配りが素晴らしいと感じました。このようなラウンド活動は、今後も続けていきたいです。

感染予防対策では、次のようなプロセスが大切です。
① 現場で起きていることに対して情報収集し、問題点を見つける。
② 問題点から、それをどうしたら改善できるか改善策を立案する。
③ 具体的にどうすればよいのか計画する。
④ 計画に基づき実行(取り組み)する。
⑤ 最終的には患者や入所者にどう還元できたのか、感染が減ったのかなどの成果を確認する。
これらすべてができて、初めて1つの成果だと思っています。リーダーの皆さんたちには、問題点や課題を見つけながら行動し、成果を確認するという視点を持ち続けてほしいですし、どんどん成功体験をしてほしいですね。

「仕方がない」を変えて
「集団感染をみんなで防ぐ」社会へ

この研修プログラムを通して気づいたこと、新たな発見はありましたか?

受講者の皆さんに「普段どんな対策をとっていますか?」と聞いてみるのですが、「次亜塩素酸ナトリウムを噴霧しています」と答える方がいたり、おむつ交換用の布エプロンを使いまわしている施設があったり、MRSAなどの耐性菌が検出されたことのある利用者さんを厳重に隔離したりしている施設もあって、まだまだ感染対策が進んでないんだな、と最初は驚きました。でもそれは、新しい知識を知らなかっただけで、できないのではない、また、利用者さんを感染から守りたいという気持ちを強く持っている。効果のある感染予防対策ができるように、正しい知識を伝え、広めていくことが重要なのだと、改めて気づかされました。

プログラム終了後の支援継続も大切。これは、実際にやってみてわかったことですね。研修会修了者にアンケートをとったところ、「1人で施設全体に周知し、徹底させるのは難しい」「1人ではモチベーションを保つのが難しい」などの課題が新たに出てきました。リーダーが複数いた方が活動しやすいのではということで、今年度も新たにリーダー養成研修会を開催する予定です。

ほかには、感染対策を万全にしたくても「管理・運営側の理解が得られない、協力を求めていくことが難しい」という意見が出ました。使い捨てエプロンなどを新しく導入するには予算も必要で、リーダー養成だけでは、十分に感染対策が進まない部分もあります。ですから、管理者の方に、感染対策は施設のメリットになるのだと理解してもらうことも重要。今後は「施設管理者にも研修に来てもらおう」と、新たな課題が見つかりましたね。

地域全体の感染対策という点で、今後の展望や目標があれば教えてください。

地域のアウトブレイクを考えると、ハイリスクの方から優先的に対策をしようということで、介護施設から取り組んできました。今後は、リーダーの皆さんが引き継いで、研修で得たことを、他職員や来訪者などにも広げていってくれることを期待しています。研修会については、新たな対象を検討していく段階でもあるかもしれません。

そうですね。感染は家庭内や保育園、学校で拡がっていることも多く、地域全体の感染対策という意味では、小児、そしてお父さんお母さん、保育園、学校への啓発活動も必要ではないでしょうか。保健所職員の方向けの研修会もできたらいいなぁと考えています。「(感染は)仕方がない」を変えたい。
「お互い(みんな)が気を付けあうことで、集団感染は予防できますよ」と伝えていきたいですね。

今回のリーダー養成研修会は、全国の他の地域にとっても、非常に参考になるモデルですね。

保健師は感染症が発生している現場の状況を把握する機会はあるのですが、具体的にどういう対策をとっていくかというときには、目崎さんのようなスペシャリストに協力をお願いするとスムーズです。今回のリーダー養成プログラムは、完成度が非常に高いと自負しています。いい連携ができたモデル、これを作れたということが、いちばんの成果かもしれません。参考にしていただけるとしたら、これほどうれしいことはないですね。

保健所と一緒にできたからこそ実現したモデルだと思いますし、たくさんの養成リーダーを育成できたことは、本当にうれしいです。私の自慢です。看護師がこのような活動をしていることについて、「(地域における感染対策は)保健所がやることでしょ?」「そんな時間ないよね?」という声が聞かれたりもしています。まだ「行政に任せればいい」という空気があるのかな、と残念に思うこともあります。確かに、一看護師が地域の感染対策に飛び込んでいくケースはまだまだ少ないかもしれませんが、感染対策は、社会全体、地域全体で考えなくてはいけないもの。楽ではありませんが、できないことではありません。今後も、地域の力になれるよう活動を継続していきたいと思っています。

- Introduction -

目崎 恵(めざき めぐみ)

魚沼基幹病院 医療安全管理室看護係長 感染管理認定看護師
同病院で、院内感染対策に従事。
病院に関わる人すべてを対象に活動を行い、
リンクスタッフを育てるなど支援業務にも携わる。
地域での講演活動や感染予防対策リーダーの養成に尽力。

山田 知佳(やまだ ちか)

新潟県南魚沼地域振興局 健康福祉環境部(南魚沼保健所)
医薬予防課 保健師
南魚沼市と湯沢町を管轄する保健所の業務として、感染症対策を担当。魚沼基幹病院と連携し、感染予防対策リーダー養成研修プログラムを実施。各施設との連絡・問い合わせ窓口として、プログラムの運営をサポート。

(聞き手・文:及川夕子/医療ライター)

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