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⼝腔ケアの⽬的は、
汚れの除去と⼝腔機能の維持・向上を図ること。
肺炎予防のためにも重要で、
⼝腔内に汚れが残っていると誤嚥性肺炎や
気道感染のリスクが⾼まります。
しっかりとケアをしつつ、
利⽤者と介助者の両⽅を守るためにも
適切な感染対策を⼼がけましょう。
口腔内から飛び散る飛沫物質が目鼻口に入らないようにする
①を防ぐために個人防護具(PPE)を身につける
口腔内が乾燥している場合には潤す
口腔内の状態を観察する
口腔ケアは、お口を洗浄する際に利用者の飛沫や口腔内に残った食べ物汚れなどが飛び散るリスクが高くなります。
つまり、介助者にとって、病原体に曝露されやすい行為といえますね。手袋・マスクに加えて、 口腔内容物が介助者の衣服まで飛び散る可能性があるなら、エプロン(ガウン)を装着しましょう。
顔を近づけてケアを行う可能性がある場合は、ゴーグルを装着しましょう。
※ここでは、⽐較的状態が安定している(⼝を開くことができ、かつ⾃分でうがいが可能な)⾼齢者向けの基本的な⼝腔ケアを前提として解説します。
⼿指衛⽣

石けんと流水による手洗い、もしくはアルコール消毒のどちらかを行いましょう。
口腔ケアに必要な容器・用具はあらかじめ準備しておきましょう。
エプロン、マスク、
ゴーグル、手袋着用
- Qなぜ個人防護具(PPE)の着用が必要ですか?
- 利用者からの病原体による感染リスクを減らすために着用します。
・エプロン(ガウン)は、介助者の衣服の汚染を防ぐため。
・マスクは、介助者と利用者の飛沫が感染源となることがあるため、飛沫の飛び散りを防ぎ、互いに吸い込まないようにするため。
・ゴーグルは介助者の目を保護し、病原体の侵入を防ぐため。眼は体の中で唯一露出されている粘膜なので、眼に病原体が入ることがないようにするため。
・手袋は、大量の体液などに直接触れることによる暴露リスクを減らすため。
- Q防護具をつけたり外したりするのに正しい順番を時々忘れてしまいます。いい覚え⽅はありますか?
- 最初に、利用者に触れる前のアルコール手指消毒剤による手指衛生を行ないます。次にエプロン(ガウン)、マスク、ゴーグル、アルコール消毒による手指衛生をしてから手袋の順につけることを、私は勧めています。なぜならケアをする手が汚染していたら困るからです。つける順番では「手袋は一番最後に!」と覚えておきましょう。
逆に外す時は、飛沫や体液などが自分の皮膚や衣服につかないように正しく脱ぐこと。
まず手袋から外して捨てたら次に手指衛生をし、ゴーグル、エプロン(ガウン)、マスクの順に外します。「てごがま」と覚えておくのはどうでしょうか。手袋を一番初めに脱ぐ理由は、汚染した手袋を付けたままエプロンやマスクを外すと、自分自身が汚染する可能性があるからです。同様の理由で、外した防護具の表面には触れないように注意してください。汚染している面に触れたと感じた時は、その都度手指衛生を行います。1つ防護具を脱ぐたびに手指衛生を行う方法もあります。

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ケアが終了して場所を移動する際には、「なぜ個人防護具を着けるのかな?なぜ脱ぐ必要があるのかな?」と考えてみましょう。
個人防護具(PPE)の着脱手順ですが、普段からPPEのことを「エプロン、ゴーグル、マスク、手袋」の順番で呼ぶように習慣づけておくと、着用動作と連動して記憶に残りやすいですね。施設内では、常に着用順で声掛けをするよう決めておくのも、大切なことかもしれません。
- 個人防護具の着脱手順
- 手袋、エプロン、マスク、ゴーグルという順番に言葉にするより、エプロン、ゴーグル、マスク、手袋と常に発言しておくと、言葉と着用動作が連動されると思うので、常に自然に着用順で声掛けをするということも大切なことかもしれません。

- Q⼝腔ケア介助をする際の個⼈防護具ですが、今の施設では物品に余裕がなく、使い捨てエプロンを毎回取り替えるのが難しいのですが……。
- ⼝腔ケア介助ではうがいや⻭を磨く際に⽣じる⾶沫を浴びる可能性が⾼いので、眼・⿐・⼝の防護のためにゴーグル、マスク、使い捨て⼿袋を着⽤するのが基本です。
加えてシャカシャカ勢いよく磨く利用者との距離が近く口腔内から激しく衣服まで飛び散る可能性があるなら、使い捨てエプロンの着用が望ましいです。エプロンは介助者を守るために着用するため、利用者の介助の状況(接触する度合)や次の利用者に触れる可能性、明らかな汚染があるなら、ケアごとの交換の必要性を考えましょう。施設に物品が潤沢にない場合には⼯夫や改善が必要ですね。
対象者の正面を避けて横からケアすることで飛び散る飛沫からの汚染リスクを最小限にすることができます。また歯磨きによる飛び散りを防止するためには、歯ブラシを小刻みに動かして飛び散らないように注意したり、飛び散りにくいポイントブラシの使用なども有効かもしれません。

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飛び散りに気をつけながらケアする方法を考えていくというのも大事なことかもしれません。
⼝を⽔でゆすいでもらう

⾃⼒でできる場合には利⽤者本⼈に「ブクブクペッ」うがいをしてもらいます。
⼝の中を湿らせ、⾷べ物汚れなどを落とすために⼤切なステップですが、介助者には⾶沫を浴びるリスクがあります。
ケア⽤品を使い⼝内清掃を
⾏う

前述のように、利用者の口腔内から飛び散る飛沫物質が目・鼻・口に入らないよう、個人防護具を適切に着用した上でケアを行います。
汚れやすい場所を確認しながら⻭ブラシできれいにします。粘膜の部分はガーゼ等でぬぐいます。⼊れ⻭は外して⼊れ⻭専⽤⻭ブラシで磨きます 。
うがいをしてもらう時には⽔や汚れが気管に⼊らないように、誤嚥には細⼼の注意を払いましょう。
寝たままの⼊居者さんの場合には、体を横向きにするか、ベッドの⾓度を調整し頸部を前屈させる姿勢で⼝腔ケアを実施します。枕などで頭部をやや前屈させるといいでしょう。
- Q誤嚥性肺炎のリスクが⾼く、⼝から⾷事を取っていない利⽤者さんがいます。⾷事をとっていなくても⼝腔ケアは必要ですか?
- お⼝から⾷べていない⽅では、唾液量が低下し⼝腔内が乾燥することで⼝腔の洗浄作⽤や抗菌作⽤が低下しています。
⼝の中の細菌が増殖しやすい状態にあるため、⼝腔ケアがとても重要です。
肺炎予防のためにも、他の利⽤者さんと同じようにケアを⾏いましょう。
うがいしてもらう

介助者には口から吐く水のしぶきを浴びるリスクがあります。
利⽤者が誤嚥することがないよう気を配りましょう。
あと⽚付け:
使い切りのものは
ビニールに⼊れて廃棄

個⼈防護具を外す際は、汚染している表⾯に触れないよう注意します。
使い切りの物品の廃棄処理が済んだら、最後にもう⼀度⼿指消毒⽤アルコールで⼿指衛⽣を。
- Q⼝腔ケア物品の洗浄は、どのタイミングですればいいですか?
また⼊れ⻭や使⽤済み⻭ブラシなどを⽔で洗う際は、個⼈防護具は必要ですか? - ⼊れ⻭着脱はできるだけ利⽤者⾃⾝で⾏ってもらいます。
使⽤済みの⼝腔ケア⽤品の清掃時には新しい⼿袋を着⽤しましょう。
入れ歯や歯ブラシ等を流水で洗浄する際は、飛び散る洗浄水に注意し、必要に応じてエプロンやゴーグルも着⽤します。使⽤済みの⻭ブラシは1本ずつ流⽔で洗浄し保管します。
複数の⻭ブラシをまとめて洗浄・消毒するのはNGです。
洗浄後はブラシ部分を上にして⽴てて保管し、よく乾燥させてください。
複数の利⽤者の⻭ブラシが接触しないように配置しましょう。
⼝腔内ケア終了
- 介助者(⾃分)を守るために個⼈防護具を正しくしっかり着⽤しましょう。
- ⾶沫リスクを最⼩限に抑える⼯夫をしましょう。
- ケアは利⽤者ごとに個別に⾏い、防護具を適切なタイミングで交換しましょう。
- 個⼈防護具の着脱前後は必ず⼿洗い⼜は手指消毒をしましょう。
- アルコール消毒液を常に⾝近に置いておきましょう。
- 汚染した⼿袋、エプロンなどを着⽤したまま移動はしないでおきましょう。
- 個⼈⽤の⼝腔ケア⽤品は交差感染を防ぐために適切に分離して保管しましょう。

- 新潟⼤学地域医療教育センター・⿂沼基幹病院看護部
看護師⻑(感染管理認定看護師)
愛知県名古屋市出⾝、結婚を機に新潟県南⿂沼市に移住。
2012年感染管理認定看護師(CNIC)