- TOP >
- Pick Up感染対策 >
- 教えて施設の感染対策! >
- おむつ交換

健康と思われる利⽤者の便にも
薬剤耐性菌などが含まれていることがあり、
高齢者施設においては、集団感染が
発生する原因となることがあります。
また、ノロウイルスなどの病原体も
便中に排出されて施設内で伝播します。
「下痢や感染症が出ていないから⼤丈夫」と思わずに、
標準予防策を徹底することが肝⼼です。
便の状態を確認する
個⼈防護具(PPE)を正しく⾝につける
汚染を拡げないための適切な物品管理と準備
使⽤済みおむつの適切な処理
おむつ交換では、尿だけの場合と便がある場合、また下痢便等の処理をする場合では排泄物が⾶び散るリスクの度合いが変わってきますので、個⼈防護具の選択、着脱などを適切に判断することが重要ですね。また、日頃から利用者の便を観察しましょう。利用者の便を観察することで、いち早く感染性胃腸炎などの発症に気づくことができるかもしれません。
いち早く感染性胃腸炎などの発症に気づくことができるので、感染対策上とても有⽤です。
陰部洗浄の際には、他のケア用品を汚染しないよう、洗浄ボトル等の取り扱いに注意しましょう。「使用前の清潔なもの」「使用後の不潔なもの」をきちんと分ける、動線を工夫するなど物品の取り扱い&運用ルールを施設全体で共有しておきましょう。
⼿指衛⽣

石けんと流水による手洗い、もしくはアルコール消毒のどちらかを行いましょう。
感染を拡げないためにも、おむつ交換に必要な物品はあらかじめ準備をしておき、業務の途中で取りに⾏く必要がないようにしておきましょう。
エプロン、マスク、⼿袋着⽤

直接おむつを交換するスタッフの基本的な個人的防具は、使い捨てビニールエプロン、サージカルマスク(必要時にはゴーグルなどのアイガードをプラス)、使い捨て手袋のセットです。おむつ交換では⽬に⾒えない病原体が⾶散する可能性が⾼いので、マスクやゴーグルで⽬・⿐・⼝を守ります。可能な限り使い捨てエプロンを着⽤してユニフォームの汚染を防ぎましょう。腕やユニフォームの袖が、湿性生体物質で汚染する可能性があるときは袖付きガウンを着用することも重要です。
エプロンは利⽤者ごと(または居室ごと)に交換、または少しでもエプロンが汚染されたら交換しましょう。※湿性生体物質とは汗以外の体液、血液、分泌物、排泄物、創傷のある皮膚、粘膜の総称。
標準予防策では「湿性生体物質には感染性がある」とみなして対応する。
おむつを外す
- Qおしっこだけのおむつ交換の場合も、エプロンは必要でしょうか?
- 尿だけのオムツを交換する際には排泄物の⾶び散りは低いと考えられるので、エプロンやゴーグルは着⽤しなくても可能です。最初に⼿袋を着⽤したままおむつ交換まで⾏ってもOKです。
ただし、便があり、陰部洗浄が必要になる場合には、排泄物が⾶び散る可能性があるため
エプロンが必要になります。特に下痢状の便がある場合には、排泄物の⾶び散りリスクが⾼いためエプロンやゴーグルをつけた上で処理する必要があります。
この場合の現実的な予防策としては、準備段階で最低限の個⼈防護具をつけておき、便が出ているかどうかは匂いでわかることも多いので、便が出ているとわかるような場合には、ケアに入る前にエプロンも着用するといった工夫が必要でしょう。
- Q手袋をいちいち交換するのは時間がかかるし面倒です。
複数枚重ね付けしてもいいですか? - 同じ患者さんであれば、手袋を二重にしておき、汚れたら外側の1枚を外してキレイな手袋に替えるという方法は、施設の事情によってはアリだと思います。
しかし、1枚外す際に新しい手袋が汚染されては意味がありません。
3枚、4枚と重ね付けする枚数が多くなると、外す時にエラーが起こりやすいため避けた方が良いでしょう。
手袋の「つけっぱなし」にも注意が必要です。手袋なしで消毒せずに介護しているようなもので、汚染を拡大させてしまう可能性があります。ケアの途中でも手袋が汚染した可能性があるなら、そのたびに新しい手袋に交換しましょう。自分も他の利用者や職員も守る意識を持つことが肝心です。
便が漏れないようおむつを
丸め込みビニール袋へ
- Qおむつ交換⽤カートは病原体伝播の原因になるため好ましくないと聞きました。しかし運⽤上カートがあった⽅が、効率がよく廃⽌できないのですが…どうしたらいいでしょうか。
-
どうしても物品運搬にカートが必要という場合もありますね。例えば…
その場合には、やはり清潔物と不潔物をしっかり分けて管理することが重要です。
おむつ交換の際に出た不潔物は薬剤耐性菌や感染性胃腸炎の集団感染につながりかねないハイリスク物品であるということを忘れずに運⽤を考えていきましょう。
・これから使⽤する物品⽤のカートと使⽤後のおむつ・汚染⼿袋やエプロン等を廃棄するカートを別にする。不潔物のカートにはゴミ袋などを被せて病原菌の伝播を防ぐ。
・1台で運ぶ場合には、絶対に接触しないようにエリアを分ける(上段・下段など)。
・汚染した⼿で、清潔な個⼈防護具や物品に触ることのないようにする。
・カート使⽤後はアルコール消毒または消毒薬含有ワイプで清拭・消毒するなどの衛⽣管理を徹底する。取⼿など汚染されやすい場所は特に消毒が重要。
・物品は置きっぱなしにしない、その都度準備する。などのルールを取り決めて運⽤することで感染リスクを下げることができるでしょう。
おしり拭きで拭き取る、
または陰部洗浄を⾏う

男性と⼥性では男性は尿道が⻑く、⼥性は尿道が短いため⼥性の⽅が尿路感染症などのリスクは⾼いです。
陰部に付着した便は⼗分に洗浄し,膣内などに残らないように注意しましょう。
⼥性の場合には特に、陰部を拭き取る際には前から後ろに向かって拭き取るようにしましょう。
- Q明らかに下痢等がある⼈に使⽤した時以外は、洗浄ボトルを共⽤しても構いませんか。居室を移動する際には交換が必要でしょうか。ケアごとに⼿袋の交換、⼿洗いはしています。
⼈数分のボトルを⽤意するとなると、持ち運びや洗浄・消毒するにも⼿間がかかりそうです。 - 使⽤後の陰部洗浄ボトルは、⽬にみえる汚染がなくても、介助者の⼿や洗浄液などの⾶び散りによって病原体で汚染されている可能性⼤です。
したがって使い回しはせずに⼀⼈ずつ交換しながら⾏いましょう。
使⽤後のボトルを他の居室に持ち込むことも、感染対策上望ましくありません。
陰部洗浄ボトルが⼈数分⽤意できない場合には、使い捨て紙コップなどで代⽤する⽅法や、使い捨て陰部洗浄シートで拭くなどの⽅法もありますので、検討してみてください。
最低限、感染症疑いや嘔吐・下痢などの症状のある⼈、褥瘡・創部・熱傷などがある⼈に使⽤した陰部洗浄ボトルは他の⼈に使⽤してはいけません。
なお、使⽤後のボトルの扱いですが不潔エリアに置いて、清潔な物品とは接触させないように分けて扱う⼯夫が必要です。
- Qおむつを処理する際に排泄物が床に⾶び散った可能性があります。
正しい清掃の⼿順は? - 次の処理をしましょう。1.拭き取ったのちに,0.1%(1,000ppm)の次亜塩素酸ナトリウムで消毒する。
2.水拭きをする。排泄物を拭き取ったあと、0.1%(1,000ppm)の次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。そのあと水拭きをしましょう。
汚染衣類やリネン、清拭に使ったタオル等はビニール袋に入れ決められた場所へ運びましょう。排泄物等の片付けを行なったスタッフは、石けん・流水による手洗いを入念に行なってから次の業務に取りかかりましょう。

使⽤後のおむつに触れた⼿でこれから使⽤する物品を触ることがないように気をつけて。
使⽤済みおむつはビニール袋などに密閉した状態で運びます。
物品の置き場や動線も⼯夫したいですね。
手袋を外して手指衛生
(アルコール消毒)をしてから
オムツ交換
おむつ交換終了

⼀⼈のオムツ交換が終わったら個⼈防護具を外して使い捨てのものは廃棄。
⼿洗い・アルコール消毒などの⼿指衛⽣をした後に次の作業の準備をします。
汚物を汚物室へ運び⼿指衛⽣
- 全ての排泄物を感染の可能性があるものとして対応します。
- 特に陰部洗浄では病原体がたくさん⾶散します。適切に個⼈防護具を着⽤しましょう。
- ⼿袋は汚染したら交換、エプロンは利⽤者ごとに交換、少しでも汚染されたら交換しましょう。
- 集団交換ではなく個別交換をしましょう。
- おむつ交換⽤カートを使⽤せざる絵を得ない場合には、運⽤ルールを取り決めて清潔物と不潔物をしっかり分けましょう。
- 陰部洗浄ボトルは共⽤しない、使⽤後は毎回洗浄・消毒します。
- 感染症の有無により、また嘔吐・下痢などの症状がある利⽤者のおむつ交換は順番を最後にした⽅がよいでしょう。

- 新潟⼤学地域医療教育センター・⿂沼基幹病院看護部
看護師⻑(感染管理認定看護師)
愛知県名古屋市出⾝、結婚を機に新潟県南⿂沼市に移住。
2012年感染管理認定看護師(CNIC)